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[コメント] 機動戦士ΖガンダムII 恋人たち(2005/日)

いずれにせよ、3本目で監督の真価が問われるわけですな。それまでは本当のレビューは保留です(とはいえ、長いですが)。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 TV版『Zガンダム』の中盤を映画化した作品。

 観終わって、最初の感想は「なんじゃこりゃ?」だった。本作はロボットアニメだったはずだが、ロボットについてはほとんど描かれておらず…いや、描かれてはいるものの、重要度が低く、エキセントリックな人間が騒いでるという印象しかなかった。特に後半のサラの話なんて、TV版のエピソードとしても重要度は低いし、特にそれまで談笑しながらソフトクリーム食べてたカミーユが突然相手のサラに襲いかかって暴言は吐くわ、腹殴って気絶させるわで、凄まじいものに仕上がっていたから。

 で、これが失敗したか?と言われると、ちょっと違うと思う。確かに物語としては破綻してるんだけど(!)、富野監督には明確な狙いがあって、その点については外してなかったと思う。

 ところでTVサイズの作品を劇場化するにあたって、それをリサイズするのにいくつかの方法がある。例えばとりあえずストーリーさえ掴ませればいい。と言う観点の元で、物語を追うことを主軸とする方法。これは最も無難且つ最も面白くないものに仕上がる。古くて恐縮だが、『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』(1983)なんかはそれで、見事に面白くない作品になっていた。

 一方、一旦TVものを完全に見限り、「完全新作」と銘打って劇場版を作ってしまう方法もある。最近のはこう言うのが多いが、TV版を再編集して、カットの大部分は流用しつつも、物語を変えてしまった『ラーゼフォン 多元変奏曲』(2003)という例もある。

 そしてもう一つの方法として、あくまでTV版をベースとしているが、物語の俯瞰ではなく、テーマを選び取って、それを強調すると言う方法がある。ひょっとしたらこれが一番難しい方法かもしれないが、敢えてこれを選んだのが本作だったと言えよう。少なくとも『機動戦士ガンダム』(1981)の劇場版でこの方法を使って素晴らしい作品を作った実績があるだけに、富野監督はこれを得意としている。

 本作の副題は『恋人たち』だった。そう。この作品の主題は恋人同士の関係を描き続け、その合間に物語を進行させようとしていたことが分かる。富野監督は明確な意思を持って救いようのない“恋人たち”を描こうとしていたのだろう。

 そう考えると、今回クワトロやレコアの出番が少ないのは、この人達には明確な恋人がいないからという理屈が成り立つ。その代わり、物語上そんなに重要でないはずのヘンケン艦長が妙に出張っているのも分かろうというもの。

 これだけ年数が経っているアニメーションを再び作り上げようとするなら、そのくらいの意志があって良い。その漢気には拍手を送ろう。たとえ物語が本当にどうしようもなくとも。

 …ところで、フォウだけど、やっぱり声優の交代は違和感あるな。この人、TV版ではこの後カミーユに殺されることになるが、折角だからこのまま終わらせた方がまだ救いがあるのではないだろうか?(それと、幾度と無く登場しながら、何の存在感も出してないロザミアも)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)IN4MATION[*] 水那岐[*]

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