コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 夢(1990/日)

多分黒澤明監督の狙いとは違ってるんだろうけど、これを観るとどうしても笑ってしまう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 夢を映画化すると言うのは一つの映画形式として結構多いが、これほどストレートに自分の夢を映画化したものは他に類を見ない。オムニバス形式なので一本一本が短かく、ほとんどオチらしいオチが無く、ストーリーも荒唐無稽と言った感じ。ただ、この映画はストーリーそのものよりも映像を魅せようと言う意図があるようで、物語一つ一つ、色々と凝った映像技術が用いられている。特徴的なのが空の色で、確かに一本ごとにまるで違う。「日照り雨」の虹のように色彩のついた空、「赤富士」の殆ど黒っぽい灰色の空に浮かぶ富士山から出た赤が混じり合った空。「雪嵐」のひたすらに白い空。「トンネル」の殆ど真っ黒な空…

 ただ、狙いは分からないでもないが、いかんせん技術的にこれだけ未熟だと、ちょっと引く。

 助監督に本多猪四郎が関わっていることからか、様々な造形や合成が試されているが、どう見ても作り物にしか見えず、しかもそれをリアルに作ろうと言う気がないようで、作り物はあくまで作り物。どうせ夢なんだから、合成は合成。と割り切ってしまっているようだ。それが分かってしまうからどうしてもリアル性が感じられず、そこら辺がどうも困ったものだ。

 特に富士山の噴火の合成は凄まじく、山が崩れた様子が全然見えないのに、山のあちこちから派手な爆発と噴煙が上がっていたりする。この部分は後に知ったが、中野昭慶が特撮部を担当したらしい。なるほど。爆発を撮ることだけに情念を燃やす人だけあって、ああ言った爆発が撮りたかったんだね。

 個人的には「日照り雨」と「トンネル」は結構好きだけど、これが傑作。とはとても言えないのがなんとも…

 真面目に撮ってる監督には悪いんだけど、どうしても笑ってしまった。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。