コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 折れた矢(1950/米)

時代性を鑑みて、良い映画だとは思うけど、スチュアートの偽善者っぷりがなんか鼻につく。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 現在では極端に少なくなったが、西部劇はハリウッド映画史を語る上で欠かすことができない重要な要素となっている。特に映画初期にあっては、あらゆる映画ジャンルは西部劇の中に集約されていた。

 それだけに西部劇は一ジャンルとして捉えることはできず、様々な要素を取り入れているのだが、それだけにその作品が作られた時代と密接に関わりを持っているものである。

 もっとも顕著に現れているのがネイティブの扱いだろう。かつてインディアン(インド人)と呼ばれ、アメリカン・スピリットを阻害する者として駆逐されるべき存在としてだけ扱われていた彼らは、時代に連れて描かれ方が変わってきた。オスカーを得た『ダンス・ウィズ・ウルブス』はその最たるもので、これによってネイティブの見方は完全に変えられた。

 だが、古い時代、ネイティブに対する意識が低い時代でも何作かはネイティブ視点で描かれた作品はあった。

 本作はその代表作で、時代に真っ向からぶつかっていった作品の一本である。

 もちろん時代が時代だけに、今の目から見れば差別的な表現も多々あるし、ネイティブの扱いもテンプレートではあるが、この時代にネイティブの視点から、外来のアメリカ人を侵略者として描いて見せた。実に画期的な作品だろう。

 良い映画であることの条件とは、たっぷり物語や演出で楽しませながら、観ている側をどこか居心地悪くさせる部分を持たせることである。その意味では本作が名作と言われることは分かるし、それをちゃんと受け止められた時代のアメリカのよき時代を示した作品でもある。

 本作は、主人公の苦悩を通してアメリカという国が持っている苦悩をそのまま描いた作品であり、それを突きつけた上で「共に考えていこう」と言っているかのようだ。興味深い。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。