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[コメント] 県庁の星(2005/日)

お役所と民間の違いを物語にしたのは良いんだが、全部ちぐはぐな演出にしてしまったな。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 視野の狭い人間が、新しい人間関係の中に放り込まれ、そこで人間的な成長を果たしていく。小説においてはある種定番とも言えるこの設定は悪くなかったし、このタイプの作品はこれまでも、そしてこれからも作られ続けていくことだろう。

 だけど、それをここでは恋愛仕立てにしてしまったのが根本的な間違いではなかったかな?

 むしろこの作品に求められるのは、お役所の考える営業と、実際生で営業を続けているスーパーの考える営業とのギャップを描くべきところだったと思うのだが、無理矢理恋愛要素を入れたことによりちぐはぐになってしまってる。

 物語にしても織田裕二演じる県官僚がいきなり横柄だったり、チェックの方法が細かすぎたり、その辺が妙に引っかかってしまう。出向である以上、まずは現場でのやり方を見つつ、そこで不満点をレポートにするなり、軽い脅しをかけるなりして自分の地位を固めていき、然る後に体質の違いを乗り越えていくという形だったらちゃんと見られたんじゃないかな?

 なんか主人公が熱血なくせに全部上滑りする発言ばかりしてるので、「こいつお役人には見えない」と思われてしまったところで失敗。折角与えられた設定を全く活かせないどころか単なるイタい奴にしか見せられなかった。

 設定上での物語の盛り上げは破綻してるので、残りは恋愛要素だけなのだが、これもなんだかなあ。このパターンだと、柴崎コウの立場って、単純に同情でしかないし、織田裕二のやってることがナルシストかかりすぎてるので(振られた時に泣き叫ぶやりかたはまるで80年代。「俺を見てくれ。俺ってこんなに格好悪いんだよ。でもそれを見せてる俺って格好良い」と叫んでるような…)、やっぱり見ていて気持ち悪い。

 演出部分に関しては完全にテレビドラマ的であり、表層部分しか見せない、とても薄い演出も気になるところ。監督はテレビドラマ畑の人で、これが映画初監督だと思ったけど、その経験不足がしっかり出てしまったんだな。

 結果として、とても中途半端な作品としか言えない。

(評価:★2)

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