コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] RENT レント(2005/米)

いろんなものに諦める前の時代の物語。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1980年代は新しい価値観を求めて模索していた時代と考えられる。70年代の強烈なカウンター・カルチャーの洗礼を受け、失われた古き良き価値観に戻る事も出来ず、かといって軽佻浮薄に徹することもはばかれる。その中で様々な模索がなされていったが、時代の波に徐々に飲まれていく、その最後の模索の作品とも言えるかも知れない。

 本作の面白さは、その1980年代末という時代を、現代にしっかり表現していると言うところだろうか。リアルタイム以外ではこの時代を描く作品はほとんど無いので、今の時代には大変貴重だ。内容としても、決して媚びることなく、当時の社会の狂乱ぶりと、薬物の恐ろしさをまっすぐに演出する内容は立派。特にそれらの研究が進んだ現代では、なんか「仕方ない」として通り過ぎてしまうような事を真っ正面から真剣に考えている姿勢が素晴らしい。

 ここに提示されているのはゲイや薬物中毒、エイズと言ったものばかり。特に薬物に関しては絶望で手を出してしまい、それを乗り越えるためにどうすべきか。浮ついた狂乱の中、それでも真剣に考えたい。という思いにあふれた物語である。

 この辺重くなりがちな素材だからこそ、ダンスや歌を思い切りアップテンポにして仕上げてみるのも面白いね。

 ただ一方、演出は面白いものの、中心となる物語がちょっと薄味過ぎるのが難点。演出に飲み込まれてしまったかな?未見だが、舞台だったらそんなことも気にならなかったのかもしれない。映画になると物語性が重要になるからね。その転換が上手くいかなかったのか?それがちょっと残念なところだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)IN4MATION[*] tkcrows[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。