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[コメント] 素晴らしき哉、人生!(1946/米)

クリスマスに。とは言わないけど、本作を観るならやっぱり冬の寒いとき、家族で観ることをお薦めします。心温かくなりたい時に。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 フィリップ=ヴァン=ドーレン=スターンの短編「The Greatest Gift」をキャプラ、ワイラー、スティーヴンスの3人が協力して設立したリバ ティ・プロが第1回作品として製作。スチュワートの俳優再開作(スチュワート自身は戦争帰りであまり乗り気ではなかったとも言われる)。公開当時はあまり話題にされることなく、興業成績も不振。実はリバティ・プロも1947年にパラマウントに吸収されてしまうのだが、その後テレビの普及と共に、クリスマスには必ず放映されるようになり、『三十四丁目の奇蹟』(1947)と共にクリスマス定番作品となっている。

 キャプラ監督の作品に一貫しているのは、人の正義感や温かい心遣いが最終的には一番強いのだ。というオプティミズムあふれるストレートな作風で、これこそが古くからアメリカにある正義感と言うものを代表しているかのよう。

 そのストレートぶりが、観る時の心理状況によって肯定的に感じる時もあるし、逆に鼻がつくときもあるもの。私に関しては、精神的に子供のときは否定的に感じることの方が多かったけど、今になると素直に良い作品に思えるあたりが面白い。精神的に老成したと言うよりもむしろ、これを啓蒙作品とか道徳の教科書的作品と位置づけず、ファンタジーの一種として、清涼剤のような感覚で観られるようになったからかもしれない。勿論深刻ぶって、いかにも「通です」と自己主張するような作品は作品として、時にはこう言った息抜きにも似た、素直に泣ける作品があっても良い(繰り返し観るにも適してるし)。

 そして、そのキャプラ監督らしいファンタジーの世界の展開が極端に出たのが本作の特徴だろう。

 ここに登場するのは基本的に悪人がいない。ポッター役のバリモアですら、どこか浮世離れた存在で、悪人らしくない。更に輪をかけてスチュワートが本当に良い奴過ぎる。本当に天使まで出してしまい、最後は大団円。と、素晴らしく単純な作り。  だけど、だからこそ映画の素晴らしさと言うのも同時に感じさせられるのだ。映画を観ていて素直に感動させられることのうれしさ、「ああ、人のことを思うことって大切なんだな」と思わせてくれる良さ。それがたとえ一瞬のことであったとしても、それがあるから救われるのだ。それらのことを再認識させられるのもキャプラ監督作品の素晴らしさだろう。

 甘くたって良いの。馬鹿げてて良いの。むしろそれを確信的に使っているからこそ、本作は輝くのだ。 

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)りかちゅ[*] ダリア[*]

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