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[コメント] マリー・アントワネット(2006/米)

なんとなくずっと監督には苦手意識持ってたけど、やっとこれで一人の監督として評価できるようになった気がする。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作を作るにあたり、監督は面白い試みを一つ行っている。

 小説であっても映画であったとしても、主人公を明確にした上で歴史を描く場合、作られた時代の影響を色濃く受けてしまう。それをどう扱うかはクリエイターによる。できる限り中立を保つ方法もあれば、クリエイター自身が思う人物像を投影する方法もある。

 それでコッポラ監督は、歴史的な事実やその当時の人間の考えというものを敢えて外し、現代人そのものを歴史の中に投入してみた。本作で描かれる人たち、殊にマリー自身はまさしく現代人の感覚そのもので動いている。

 マリーが何故あんなに贅沢な暮らしをしたのか。それは現代人ならこうやってストレスを解消すると言う観点から見ている。もし手元に溢れるばかりの金があるならば、孤独さを癒やすためにそれをふんだんに使うだろう。それは時に自分自身を美しく飾るため、時に過度に贅沢な食事であったり。そして自分を褒めてくれる人を作るために金を遣う。全部今の人間がやりそうなことだ。中世の価値観では無く現代の価値観を導入して、それに悪びれない。これが本作の最大の魅力だ。

 それを「歴史が分かってない」と怒ることは簡単なのだが、監督の狙いがそこにこそあったのだから、それを敢えて悪口を言う筋合いはないし、逆にそれでよく突っ切ったものだとむしろ感心出来る。

(評価:★3)

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