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[コメント] 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(2007/日)

人の本当の姿を知るには、そいつが逆境に陥ったときの反応を見ると分かるとも言われます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 全体的に怪演を見せる人ばかりだけど、その怪演ぶりは、敢えて人間を逆境に落とし込んだ時に見せる反応ってものを描こうとしたんじゃないだろうか。

 本作で登場する4人の人物たちはそれぞれの方法で不幸に立ち向かう。兄の宍道はそれを自分自身の死という形で逃げた。澄伽は周囲の人に罪をかぶせることでアイデンティティを保つ。

 しかし本作の本当の見どころは妹の清深と兄嫁の待子の反応。清深は自分の不幸さえすべて客観視し、創作活動に転換できる力を持つ。一見いじめられているように見えても、実は全くの逆。姉に知られないように、姉を完全に笑いものにして、その怨念までも漫画の肥やしにしてしまった。こう言う人間はとにかく強い。と言うか、あらゆるものをネタにしてこそ本当の作家だろう(それで人間関係がどんなに悪くなろうとも)。

 そして最も恐るべきは待子の方で、このキャラはどんな状況に置かれても、ヘラヘラ笑うだけ。辛いとか言うレベルを超越してしまっていて、どんな逆境もものの数ではない。これが単に鈍いだけのキャラではないのは、嬉々として不気味な人形を作ってるシーンに現れている。自分の暗黒部分まけ出ていても全く気にせず、あらゆるものを平然と受け止める。はっきり言えば、こいつはモロに“化け物”だ。

 そう考えて思うのは、本作って、一種のクリーチャー作品なんじゃないのだろうか?

 ものがものだけに、上等の笑いとまでは行かないけど、ツボにはまれば見どころの多い作品でもある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)煽尼采 ぽんしゅう[*]

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