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[コメント] 疑惑の影(1943/米)

同じ名前だとちょっと混乱しません?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 数多くの作品を作ってきたヒッチコック監督自身がお気に入りだと公言している作品で、サスペンスの名手の誉れ高いヒッチコック作品の中でも、極めて緊張度の高い作品に仕上がっている。メインストーリーの方は今から見ると穴が多いし、かなりの偶然も入り込むため、純粋な意味でのサスペンスとはちょっと違っているようだし、ちょっと物語としては一本道過ぎるかな?と言う思いはあるものの(これは多分連発してヒッチコック作品を観ていた時、『断崖』(1941)の後に本作を観たためだろう)、だからといって本作の映画としての出来にいささかの問題も無し。どこか陰のある冒頭の叔父の登場から、和解、そして徐々に恐怖が増していき、どんどん危険が増していく。と言う作りは、サスペンス映画の手本とも言えるべき出来だし、突然に驚かせるのではなく、ジワジワと盛り上げていくやり方も素晴らしい。全編に渡って緊張感が持続するので、観終わるとかなり疲れる。

 出色なのは音楽の使い方。本作で使用されている音楽はメリィ・ウィドウ・ワルツ。これは『メリィ・ウィドウ』で用いられた曲で、音楽自体は大変軽快なもの。最初はこの軽快な曲に合わせて物語も明るく展開していくのだが、物語が進むに従い、音楽自体は変わっていないのに、逆にそのミスマッチぶりが徐々に不気味な印象を伴っていくこの展開は名人芸と言っても良い(日本では黒澤明がこの使い方が上手く、『酔いどれ天使』(1948)のドヤ街、『野良犬』(1949)の子供の遠足の歌などで上手く使っているが、オリジナルだけあってヒッチコックの演出はしつこいほどにはまってる)。

 ただ、ちょっと疑問なのは、ライト演じる主人公と叔父の名前がなんで一緒なんだろう?時折混乱するよ。

(評価:★4)

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