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[コメント] ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007/英=仏)

事実はもっと単純だ…って、おい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 どんなに退屈な作品であっても、逆にどんなに派手な作品であっても、映画にとって最初の5分はかなり重要で、ここで居住まいを正さなければならない。と思った作品にはまず外れがない。

 それで本作は、本気で冒頭5分の掴み方が半端じゃなく詰まっている。主人公のエンジェルがどんな人で、周囲からどう思われているか、左遷の理由がなんであるか、それら全てがあたかもコマ落しのように高速に、そしてコミカルに描き、その怒涛の情報量に対処してる内に5分後には劇中のエンジェルと同じく視聴者も茫然として、田舎町に連れていかれる。あっという間に味わうこの疾走感は半端じゃなく心地良い。

 それで冒頭での情報量とスピード感は凄いのだが、次の瞬間には今度はいきなり間伸びした時間へと連れていかれる。最初の疾走感があるために、この間伸び感がますます際立つわけだが、その記憶があるために、いつか又こう言うことがあるだろう、と言う期待もあって、本作は終わりまで退屈なしに観ることが出来る。この緩急の演出が本作の強みで、時に敢えて思い切った演出を用いることで、全体の流れを上手く管理することを可能にさせている。全般に渡って時間的な演出の用い方が良い。全般的な演出も、概ねコミカルに、しかし締めるべきところはきっちり締めていて、演出面に関して言うなら、際立った上手さを持っている。

 物語面でも、ミステリーの基本を抑え、徐々に明らかになっていく殺人事件の謎に対し、地道な捜査と、そこから導き出される真実…を導き出した揚げ句、すべてをひっくり返す事実と、最初から最後までよく考えられている。「事実はもっと単純だ」と知らされたときのエンジェルの表情が又最高に良い。ベタだけど、本当に“開いた口がふさがらない”ってのを素でやってくれると、何でもOK!てな気にさせられる。

 そして最後の、ほとんどなんでもありの大アクションシーンへとなだれこむ。特にこのシーン、生身の人間同士の戦いなのに、演出は日本の特撮そのまんまで、ほとんど『サンダ対ガイラ』…ここまでサービス精神に溢れてると、文句言わずに高得点を与えたくなる。こんなに楽しいアクション映画を観られるってだけでも幸せな気持ちになる。

 最初に本作を“異色”と書かせていただいたが、一つ一つの画面を観る限りは、実際にはすべて基本的な演出をしてるのに過ぎない。しかしながら、その基本としている映画ジャンルがアクション、サスペンス、ミステリー、ホラーと、実に様々なところから取られ、それを上手い具合にまとめてバランス良くまとめ上げているので、色々な意味でお得な一本。監督の相当の映画オタクぶりも窺えて良し。特に様々なジャンルを無節操に観るタイプの人間にとっては楽しめるはず。

 ところで本作は意外に豪華な配役でも知られている。元ジェームズ・ボンド役のダルトンはともかく、カメオでピーター・ジャクソンやケイト・ブランシェットまで出てるのは驚き(ただしブランシェットは医師役で、目だけしか出ておらず、ジャクソンに至ってはサンタの格好をしてる写真だけだが)。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ホッチkiss Myurakz[*]

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