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[コメント] おくりびと(2008/日)

ごくごく単純な物語展開は、最初から海外向けで考えているためかな?設定はとても良いですよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 本作の着眼点はとても良い。人の死を扱うことは文化圏毎に異なるが、表になかなか出せないことであり、同じ国の中でも「こんな事があったのか」と思わせる事になるし、一種の文化として世界的に発信も出来る。死を扱うだけに、その職業がその国の中ではあまり快く思われてないことや(特に日本はその傾向が強いようにも思える)、その重要性なども、しっかり描ききってくれて、大変感心できる作品ではある。

 その設定“のみ”を活かそうとした物語になっているのは、果たして映画の完成度として良かったのかどうか。

 はっきり言ってしまえば、物語があまりにも単純すぎるのだ。基本的に物語に一切のひねりを使わず、主人公の周囲の人物との関わりだけで物語が全て進行してしまう。ある意味で忌まわれている職業であるにかかわらず、その辺の言及も極めて少ない(ラストの広末の「この人は納棺師です」は感動どころか、気分的に冷えた)。美しく仕上げられているかもしれないけど、その実、全く当たり障りのない物語である。海外向けと言う事を最初から考えていたのならば、この素直さはそのまま強味だが、物語性の低さにはちょっと疑問あり。

 それと、他のキャラは上手いにもかかわらず、主人公の本木雅弘の演技の悪さも気になる。存在感はしっかりしているものの、全般を通してナルシストっぽい描写が多くて、ちょっと引っかかった。なんというか、自分が情けない訳をやってるという事実に対し、「俺って凄いだろ」という自己陶酔が透けて見えてしまうし、一々「俺を見てくれ」的なショットが多い。諸肌脱ぐシーンも多いし…役名の小林大悟じゃなくて、モロに本木雅弘そのものが出てくるようにしか見えない。広末涼子や山崎努と言った周囲を固める面々が良い役をやってるだけに、主人公だけミスキャストに思えるんだけどな。

 …とは言っても、前述したように設定部分はとても面白く、それを活かす演出も随所に入れていて、映画としてきちんと成り立っているのは確かだし、良い作品であることを否定するつもりはないけど。ちょっと引っかかるところが多いだけ。

 そうそう。本作で結構面白いところは、食事のシーンが結構多いことだろうね。こじゃれた洋食ではなく、基本はほとんどが和食で、しかも肉類を使った料理がよく出てくるのも、「死者を弔う」という設定にもつながっていてなかなか楽しい。個人的に食べるシーンがたくさんある映画が好きだってのもあるけど。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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