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[コメント] 斬〜KILL〜(2008/日)

最近の押井監督は銃よりも剣の方にご執着。だけど、ここでは付け焼き刃的。かな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 低予算で短い時間にアクションを取り入れて剣劇を演出しなければならないというハンディはあるものの、それぞれの監督が、個性にあった多彩な作品を作っているのが本作の売り。四本の中でネタ系が二本、アクション重視が一本、そして雰囲気重視が一本と、比較的バランス良く仕上げられている。

 以下一本ごとの短いレビュー。

 『キリコ』:これまでの押井守監修のオムニバス作品には常連となった辻本監督による作品だが、この人の描くアクションというのは、全部変わらず。物語自体が無理があり、アクションの最中に取るアングル映えする停止時間がちぐはぐな印象。オチは『世にも奇妙な物語』的。この四本の中では最もクォリティが低いかも。

 『こども侍』:これまで馴染まなかった深作健太監督をちょっと見直した。舞台は現代ながら、侍がまだいるようなパラレルワールドで話が展開し、トーキー以前の活弁士による解説を加えつつ行われている。雰囲気は面白いけど、やってることは深作欣二っぽいチャンバラで、割腹自殺する子供のシーンとか、子供同士の喧嘩で刀に斬られて腕がすっ飛ぶとか、まこと不思議な世界観を作り上げている。50年代の大映作品(主人公の名前からして『大菩薩峠』の机龍之介からだし、基本固定のあおりカメラにこだわってるのもそう)と70年代の東映作品を混ぜ込んで、チープであるが故にその利点を活かそうとしたネタ系作品。

 『妖刀射程』監督の田原実はこれがメジャーデビュー作品。本作品中では最もアクション性が高く、短い時間をいかに格好良くアクションシーンを撮るかで腐心したかのよう。衝撃波を発する刀と銃の融合した武器の使い方も面白い。アクションシーンにはかなり長けている監督のようだ。

 『ASSALT WOMAN2』先の『真・女立喰師列伝』の一エピソード『ASSALT WOMAN』の続編らしいが、ここでは天使と悪魔という二人の存在の確執が描かれることになる。四本の中では最も雰囲気重視の作品で、相変わらずの川井憲次の音楽や、雨や風と言ったエフェクトを使い、ほとんど無言のまま切り結ぶシーンは、これまでの押井守には観られなかった“色気”の演出まで見て取れる。ただ、こう言っちゃ何だが、完成度はそんなに高くない。雰囲気重視にするんだったら、もうちょっと徹底して欲しかった感じ。少なくとも、「おそらくこんな感じで作るんだろう」と事前に考えていたことから、一歩も出るものではないので、ファンとしては全く裏切られなかったことが、逆に寂しい。

 今度IGの肝いりで作られる実写映画『武蔵』の脚本を任された押井が、その感触を知るためも含めて好きなように作ってみました。的な作品になるんだろうが、とりあえずDVD化されたときのコメンタリーが楽しそうな作品ではあった。

(評価:★3)

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