[コメント] 片腕マシンガール(2007/米=日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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新世紀に入ってから現在まで、ハリウッドは危機的状況にあるらしい。簡単に言えば脚本不足で。
映画の町で、しかも優秀な脚本家がたくさんいるというのに、脚本不足というのは皮肉な話なのだが、ハリウッドが自ら課している自粛が良い脚本を作れない状況を作り出しているとも言われる。
端的な言い方をすれば、物語上不必要とされる人間の死の描写はできず、可能な限り血を流すことも御法度。肉体的精神的に苦痛を与えるシーンあったらあっと言う間にレーティングシステムに抵触し、一般公開不可となる。そんな状況である。言うなればとても上品な作品しか今のハリウッドでは作れないのだ。今流行のヒーロー作品を観ても、残酷な描写や死というのは最低限に押さえられてるのがわかる。
しかしながら、これだけ注意していても、視聴者が望むのはもっと過激な作品である。ハリウッドメジャーが望む方向と、一般視聴者が望む方向が全く別方向を向いてしまってるというのが現在の状況とも言える(アメコミヒーロー作品がやたら作られてるのはその妥協点と考えることもできるだろう)。
それでハリウッドが見つけた活路は、海外で作られた作品を配給することと、そのリメイクを作ること。そして製作費を出して海外のクリエイターに過激な作品を作ってもらうことだった。
前置きが長くなったが、本作が作られた背景にはそのようなハリウッドの状況がある。日本人監督が日本を舞台に、日本人だけ出して作る分にはいくらそれが過激になろうとかまわず、それを堂々と劇場にかけることができる。
だから本作に求められたのは最初から過激さと、あふれんばかりの血糊、そして馬鹿馬鹿しさだったし、監督は見事にそれに応えてくれた。
これはどうお世辞を言おうと、最初から物語は破綻してるし、描写に至っては笑えるほどあっけらかんと殺人シーンばかり。ましてや何の意味もなくセーラー服姿の主人公が片手に装着したマシンガンやらチェーンソーやらを振り回すだけ。
でも、それがつまらないか?と言えばさにあらず。時に映画に求められるのは、単なる過激さであり、ばかばかしくて笑ってしまうストーリーなのだから。
その意味では、本作はもっとも映画らしい映画とも言えるのではないかとさえ思う。 だって楽しいんだもん。それ以上映画になにを求めるんだ?その開き直りで作られた作品があっても良いじゃないか。
モラル的には決して褒められたものじゃないので、最初から開き直れる人だけしか観てはいけない作品でもあるけど。
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