コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇(2009/日)

細かいことは言っちゃいけません。ひたすら燃える作品が好きな人だったら、何も言わずに観てください。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 テレビ版と劇場版とでは、かなり細かいところで違いがあるのだが、その辺のことはここでは言わない。テレビを観ていたことが前提だといろいろと違いが感じられるということだけで充分。大体物語自体が“好きな女を取り戻すために悪人を倒す”というストレートすぎる王道だから、言う必然性もない。実際本作は恐ろしいほどに単純な物語なのだ。

 ところで、テレビの演出に関しては、かなり凄いものがあった。テレビだから許される、そして最近のアニメではまず見られることがなくなった、タメの演出が非常に細やかに作られていたのだ。単なるノリと勢いだけで作られたテレビ版の前半部とは異なり、一旦楽しげな未来社会を出して見せた後で、急転直下で絶望に落とすのだが、そこで低迷したストーリー展開を2話に渡って丹念に作ってくれていた。昔「あしたのジョー」では、この辺のタメの作り方がとてもうまく、物語自体は観ているのがきついのに、観ずにはいられない。と言った感じの作りを、数話かけて作ってくれたりしていたもの。しかし、今のスピード感重視のアニメ作品ではとんと見られなくなってしまった作り方だ。この演出をきっちり作ってくれたことがテレビでの本当の成果だったと思う。徹底的にダウン調に入ることで、じりじりとストレスをため続け、そして、それを一気に爆発させる。あの演出で、私なんかはかーっと頭に血が上った感じがした。私がこの作品を最大限評価するのは、このタメの部分に他ならない。

 これはテレビでは評価されるのだが、映画にする場合、尺の問題もあって演出は変える必要があって、実はこの作品を観る際、私が一番注目していた部分がそこだった。どれだけきつい内容を長く取るのか?

 …と、思っていたのだが、そんなことは全く本作では顧慮されなかった。前回の取りこぼしから前述したタメ部分を経過するまで時間にして30分弱で経過。その後は、徹底した燃え展開のみ。

 ファンであれば嬉しい描写だが、私が評価していた部分は他にあるわけで、その部分に関してはかなり不満を感じてしまう。つまらなくなっても良いから、徹底的にネチネチと精神を犯すような描写が続いてほしかったとは思う。それこそ本当の緩急だろうと思うのだが、その辺がすっぱりと割り切られていたのには不満。

 ただ一方、流石にそれだけに特化しているだけあって、燃え描写に関しては申し分ない。というか、これ以上は到底無理と思えるくらいの怒濤の展開が待っていて、これだけでも充分お腹いっぱいにはなった。グレンラガンはどんどん巨大化し、最後は銀河をも越えてしまう。この馬鹿げたあり得ない物語を、ノリで受け入れてしまうのが本作の楽しみだろう。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ホッチkiss[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。