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[コメント] のだめカンタービレ 最終楽章 前編(2009/日)

ちゃんと映画として作る理由はありました。なんて贅沢な時間。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 テレビドラマがヒットすると、映画化するというのは最近の流れ。これは確かに不確定要素の強い映画では、一定のヒットを望めるという意味では意味があるだろう。ただ、この傾向はあまり好きではない。ドラマの方でもきちんと終わらせることなく、いかにも。な引き方をするし、「続きは劇場で」的な客引きも媚びているように思えてしまう。そもそもがテレビシリーズの方を映画の予告のように作ってしまう姿勢も本来の趣旨から離れているようにも思えるし。だから好きなドラマであっても、映画版はDVDがでてからレンタルで。というのが私の基本スタイル。

 それが何でこれだけを劇場で観る気になったのか。それが今に至るも明確な答えはない。ただ、何故か「これは観なくてはならない」と言う思いに駆られた。としか言いようがない。まあ、何を言っても弁解にしかならないだろうが。

 …とは言え、本作は実際に巧く作られた作品だった。それに少なくとも、本作に関しては、劇場でかけられる意味はちゃんとある。

 本作が映画としてちゃんと成り立っている要素はたった一つ。コンサートの描写を映画でやる。これだけで充分。

 「のだめ」が他のドラマと違っているのは、この作品の主題がオーケストラであり、物語の中心が音楽、しかもクラシックコンサートであるという所にある。

 ただ、テレビシリーズの方では、予算諸々の都合上、人間ドラマの方に主題が取られざるを得ない。クライマックスに音楽を持っていき、それを劇的に描くために人間ドラマを積み重ねる。と言う形を取っていたし、テレビではこの方法は正しい。

 対して映画版の方は、音楽の重点をかなり増し、コンサートの合間にドラマを展開させる方法を採った。予算も時間もふんだんにある分、海外ロケもたっぷり時間を使えるし、フルオーケストラでの演奏風景もきっちり作れる。

 そしてそれは大正解。劇場の音響でクラシックのコンサートが聴けるってのは、なんて贅沢な楽しみ方だろう。ちょっと音響の良い映画館で本作を観たが、ドラマよりもむしろそっちの方で幸せな気分にさせていただいた。

 コンサートを中心にすると言うことは、音楽パートの時間を相当に使うことであり、そのために前後編にせざるを得なくなったが、じっくり時間をとってくれたおかげで、本当に贅沢な時間を過ごさせていただいた。おかげで是非後編も観たくなった。

 これはビデオで観るには勿体なさすぎる。劇場で観てこそ意味のある作品なのだ。劇場で作る必然性と言うものを体現したような作品といえるだろう。

(評価:★4)

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