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[コメント] ラブリーボーン(2010/米)

作品そのものよりも、監督の考えを推測する方が楽しかったりします。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 一応本作は「ファンタジー」にカテゴライズされると思うが、むしろ霊界と現実界との接点をできるだけリアルに描こうとしているように見える。

 仮に霊界なるものがあるとすれば、それが現実界に与える影響とは微々たるものだろう。せいぜい「ここにいるよ」と言う事を親しい人に微妙に分からせるのが限界で、自分を殺した犯人が誰かを分からせたり、ましてや復讐したりをする力は持たない。そんな無力な霊が、現実界で親しい人たちを見つめるだけ。現実界では、自分が亡くなったことから世界はどんどん変わっていくが、自分は変わらないまま、それを見つめることしかできない。それを一抹の寂しさをもって描こうという姿勢を描くのは面白い。

 だけど、一方では、これは大変物語を作り難くもさせている。なんせ主人公が無力なので、事件そのものは全部主人公とは関わりを持たない人が解決していくしかない。それでは、少々盛り上がりに欠けてしまう。実際にこの作品で動いてるのは、主人公の家族だったり犯人だったりしているため、共感できにくい作りになってしまったのは事実。元となった小説は未読だが、明らかにこれは小説向きの素材で、敢えて映像化する必然性も低いだろう。

 その中で結構本作はキャラクタに助けられた所も大きい。これがおそらく出世作となるであろう主人公役のトゥイッチは確かに上手い。綺麗という訳じゃないけど、こういう役を上手くできるキャラはこれから良い役が付くだろう。でもやっぱりお母さん役のワイズだな。年齢重ねるにつれ、ますます綺麗になっていく。良い役者だ。何かとお騒がせなおばあちゃん役がサランドンってのも人を食ってて良い。この三人観てると、“世代交代”と言う言葉が頭に浮かんでは消える。

 ところで、そんな難しい素材をPJが敢えて選んだ理由は何だろうか?

 PJはこれまで幽霊を題材にした作品を数本作っていることがまず挙げられるだろう。例えば『乙女の祈り』であれば、霊界との通信ができる。と言う勘違いが物語の発端だったし、『さまよえる魂たち』は、文字通り幽霊が現実界に絡み、その霊を見ることができる主人公を扱ったコメディとして仕上げられていた。ついでに言えば、「二つの塔」ではやたら存在感のある幽霊の姿もあった…PJは幽霊の出てくる作品を作りたがってるんじゃなかろうか?単なる監督の趣味と言えばそれまで。

 そしてそれに関わることだが、『乙女の祈り』にせよ『さまよえる魂たち』にせよ、霊と人間との関わりの描写がまるで異なっている。同じ幽霊が出る作品でも、色々な描き方をしてみたい。と言う監督のチャレンジ精神の現れとも見られるだろう。

(評価:★3)

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