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[コメント] ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009/スウェーデン=デンマーク=独)

以下ごちゃごちゃと書いてはいますが、結局リスベットが無茶苦茶気に入った。それで説明が付いてしまいます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 妙に気に入ってしまったのだが、これのどこが良かったのか。と聞かれると困る。強いて言うなら、雰囲気がとても好み。としか言いようがない。私の少々偏った趣味に適合する部分が大きかったからだろう。

 好みその一。極端に寒いとか暑いとか言う描写が映画全体を彩ってる作品が好き。海外では例えば『白い服の女』とか、『上海から来た女』とか。日本では黒澤の『白痴』(1951)や『野良犬』(1949)がとても好きなのは、「暑い」とか「寒い」とかが物語の演出にうまく関わってくると、なんかそれだけで楽しくなってくる。

 本作の場合、氷点下20度の世界で物語が展開し、全体的に寒さが巧く演出に採り入れられていた。非常に細かいところだが、朝に薪を取りに行くとき、体を小刻みに震わせて、積もってる粉雪を振り払うシーン。これは実際に寒冷地に住んでいた人には分かる仕草。外から帰ると、熱いコーヒーをまず淹れるシーンも、寒さを強調してるし、それだけで嬉しくなっていった。

 その二。人間関係の間の取り方がとにかく巧いこと。ミカエルと言い、リスベットと言い、人間関係を作る事が巧くない。

 ミカエルの方はそれでも世知長けている分、人を無視することで距離間を保つ技術を会得しているが、それでも強引に懐に飛び込まれると戸惑うことしか出来ない。自分を守るために孤高の存在を気取るが、実際は単純に人との距離間が作れない人。自然立場は受け身なのだが、どんな場合でも頑固に踏みとどまる。その意地が画面から沸き上がってくる。

 一方のリスベットの方は更に極端で、他の人との距離間を全く取ることができない。人に近づくのは、その人を愛するか、あるいは傷つけるため以外なし。幼少時の虐待から来てるってのは出来すぎた話ではあるが、完全なメンヘラ女性。いつ何時性格が豹変するか全く分からないキャラ。この人がいるだけで緊張感が生じる。実際この作品の大部分は人間の表情を追うことで終わってるのだが、その間合いの取り方がとにかく上手い。  こんな二人が合わさったバディもの。作り方を間違えると、単なる凸凹コンビものになりがちなのを、二人の距離をつかず離れずに微妙な間にしたため、絶妙な間を作ることに成功させている。

 三つ目。これは月並みだろうが、リスベット役のノオミ・ラパスがとても気に入ってしまったこと。いや、一見、全身にピアスや入れ墨を施したパンクくずれの性格破綻者に思えるし、実際その通りなんだが、これが妙にツボにはまった。こればかりは自分自身でもよく分からないが、こう言うのってツボだったか?と思えるくらいのはまり度合い。…てか、突き詰めて考えると、単純に「リスベットが好み」。ってなってしまう。そうだったのか?それだけの理由?自分で驚いた。

 多分いくら言葉を重ねても、三つ目の理由だけで充分だってことかも?

(評価:★4)

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