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[コメント] NINE(2009/米)

女性を観るべき作品なのに、上手かったと言えるのは男性陣ばかり。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まず事前に知っておくべき事。これがフェリーニの『8 1/2』(1963)のリメイクだと言う事。これを事前にしていたら、最初から期待なんてしなかったものを。

 『8 1/2』というのは、言ってしまえば映画史における鬼子。あの当時、本当に映画に愛されていたフェリーニだから出来たものだし、あれが傑作と言われるのは、ほとんど奇跡のような噛み合いによるものだ。いくら真似しても出来るものじゃない。これに挑むという時点でアウト。

 あの作品は、あらゆるものから逃げだそうとしていたフェリーニが、いい加減に作ってしまったのが、恐ろしい程の偶然の重なりで、とんでもない映像になってしまったに過ぎない。あれを作るのは、監督であるフェリーニでも二度と無理。映画が生み出した奇跡と言ってしまっても良いくらいだ。

 そんな唯一無二の作品に挑む事自体が無茶。大体あれはどこか投げやりに作っているところが妙な説得力を持っていたのに、それを真面目に作ってしまったら、面白さが全く抜けてしまう。根本的に素材の選定に間違いがあったとしか思えない。

 更に登場するキャラの大部分がはずしまくり。登場する女性達は軒並みオスカー俳優ばかりなのだが、何故彼女たちがオスカー俳優となれたかというと、チャレンジ精神で自分には無いものを引き出す事が出来たからに他ならない。しかるに、本作に登場するほとんど全ての女優達は、今までの演技の延長線だけで演技してる。はっきり言ってしまえば、チャレンジ精神を失った抜け殻の演技ばかりを見せられた気分。

 特にペネロペの扱いは酷かった。元々この人はフェロモンの固まりなんだが、そんなのに日陰の女なんかやらせたら、単なる色気ありすぎる女で終わってしまう。こういう役は彼女の色気を無駄遣いにするだけ。色気が過剰だと、単純に下品になる。彼女に関してはこの使い方は避けるべきだっただろう。『抱擁のかけら』(2009)でアルモドヴァルは存分にペネロペの色気を使いこなして見せたのに、これでは全然駄目(それでも本作がオスカーノミネートしたのは納得いかん)。

 他にもキッドマンやローレンも単に存在感のみの立ち位置で、演技を引き出そうともしてない。役者として非常に高い位置にいるのに、それを活かす演技をさせられなかった。せいぜい本作で頑張ったのはコティヤールくらいだろうか?何という勿体ない使い方か。

 ミュージカルシーンのやや下品な演出は良いにせよ、少なくとも『シカゴ』で見せた見事なはまり具合も感じられず。もうちょっとぐっと引き込んでくれる部分を作って欲しかったな。

 それでもこの作品の評価をあまり低くしたくないのは、男優陣の巧さに救われていたことと、好みの女性がこんなにたくさん出てる。と言う贔屓目あってののこと。気持ちとしては大変複雑。

(評価:★3)

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