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[コメント] ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲(2010/日)

オープニング10分で全ての見所が終わる。これこそ見事な三池作品。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 哀川翔出演百本目と言うことで記念作品として作られた前作『ゼブラーマン』は、悪い言い方をすると、思いもかけぬ良作に仕上がった。これは監督三池崇史、脚本宮藤官九郎という初顔合わせのコンビがうまい具合にはまり、お互いの個性を殺さずに作られた事が理由だろう。特に三池監督はきわめて当たり外れの多い監督なので、この組み合わせがうまくはまったのはとても意外な感じだった(だから絶対失敗すると思って劇場はスルーした)。

 その続編だし、前作を劇場で観られなかったことに後悔したので、「流石に外れはないか」と思っていたのだが、どうも私が間違っていたようだ。ここまで外されると、呆れを通り越して、なんか「流石三池監督」と逆に感心してしまうほど。前回では高めあうことが出来た三池監督と宮本脚本が、今度は低め合ったというか、お互いにやる気を失っていたというか…

 駄目なところを挙げたら、それこそいくらでもあるが、とりあえず映画ファンとしても、特撮ファンとしても、どっちも反応できずに終わった。それに宮藤官九郎って、『ゼブラーマン』観た限りでは特オタの事をわかっていると思ったけど、たぶん全然分かってない。

 前回の話が面白かったのは、中年になっても特撮オタクが止められない痛々しい主人公が、いつの間にか本物のヒーローになっていく。その落差の課程を丁寧に描いていったお陰だった。

 本作でもそういう落差は意識的に出されている。記憶を失い変身も出来なくなった主人公が、自分が何者であるのかを戦いの中で見つけていく。と言った形でだが。

 だが、意識的なくせにそれが落差になってないのが問題。一旦ヒーローになった人間なのだから、どういう形にせよ又ヒーローになれるのは分かってるのだし、実際に思ったとおりヒーローとして復帰してしまう。

 つまり最初からプログラムピクチャーになってしまう事が前提にあり、しかもそれに全くひねりを入れてなかった。これだけでやる気本当にあるのか?と思えてしまう。  当たり前の物語をひねりを入れないで作ってるので、監督の個性を出すためかその分他のところに力を入れることになるが、確かにそれは凄い使い方をしてはいる。ただし、それも全部仲里依紗のミュージッククリップで全部使い果たしてしまった感じ(『ヤッターマン』で深田恭子に使ったのと同じやり方)。本当にオープニング10分だけは徹底的に力が入ってるのだが、最初の10分でこの作品は全部おしまい。まあ他にもオタ向けのキャラを適宜投入したりもしてるけど、結局一番力が入っていたのは仲里依紗の最初の描写だけという話。本当にやる気ってのをこれほど感じさせられない作品のも珍しいくらいだ。

 間違ってるかもしれないけど、この作品は、哀川翔本人がもう一度!と無理にごり押しした結果なんじゃないだろうか?しかし、作り手の側の方がやる気を失っていたお陰でこんな話になってしまったのでは。でもこれこそが三池崇史作品の面白さとも言えなくもないか。だから、あんまり低い点数は付けられない。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Walden[*] McCammon

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