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[コメント] カルメン純情す(1952/日)

あまりにも雰囲気は違っているけど、二作が合わさって意味を持つ作品になってます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 木下監督による『カルメン故郷に帰る』の正式な続編。前作は日本に新しい時代がやってきたことを高らかに謳った作品で、旧習から離れられない田舎の人間の前に、脳天気なほどに明るいストリッパーが帰郷したという、一種のスラップスティック的な話に仕上げられていたのだが、本作では一転。その脳天気に見える彼女たちが都会で一体どんな暮らしをしているのか。と言う事に焦点を当て、その辛い現実を細やかに描いて見せた。

 ここでタイトルに『純情』という言葉をもってきたのは面白いところ。カルメンにとってストリップは芸術のはずなのだが、プラトニックな情熱を抱いた人に対しては、どうしても肌を見せられない。これはおそらくストリップそのものを恥じているのではなく、相手が好きな人だから、自分の狂騒的な部分を見せたくない。という純情であろうし、又この場合の「純情」は「自分に真っ正直に生きよう」という意味合いも持っているんじゃないだろうか。本当にやりたいことをやる。恋をしたいなら、真っ正面から恋をするし、人を好きになったら一途に好きになる。その結果どうなっても後悔はしない。最後のカルメンの笑顔は、確かにその強さを持った表情に見える。

 丁度テレビの放映で『カルメン故郷に帰る』と本作を続けて観たわけだが、そのあまりのギャップに驚かされたのと、一見脳天気に見えるカルメンが一体どんなことを考え、どんなことを背負って生きているのか。その現実をしっかりと見せてくれた。前作で見せたカルメンの明るさは本作でも健在ながら、その笑顔の背後も見せたのはさすが木下監督だ。

 監督としては、新しい時代が来たことを喜びつつも、その新しい時代のためには、色々頑張らなければならないことが多い。と言う事を伝えたかったのだろう。実際その通りだし、声や態度だけでは足りないのだ。しっかりと社会の重みというものを受け止め、その上でそれを越えて見せようとする。ある意味とてもポジティブな社会派作品だ。

 まあ、話が真っ正面過ぎるのと、暗い現実が続くために、観ていてかなりキツイのは確かなのだが。

(評価:★3)

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