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[コメント] エクスペンダブルズ(2010/米)

見ようによっちゃ、とんでもない皮肉映画。でも、こんなのが作れる人は今や本当に貴重。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 シルベスター・スタローンがハリウッドのアクションスターを一堂に会して造り上げた痛快娯楽大作。出演者の名前だけでも、スタローンを始として、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガーと、全員ピンで20年前から主役張っていた人達ばかり。名前を呼び上げるだけでも心に震えが来るくらいの豪華メンバーだ。こんなものをスクリーンで見せてくれただけでも眼福と言った感じ。スタローンってこんなに人脈と人望があったんだなあ。

 何というか、この作品観てると、善し悪しじゃなくて、“幸せ”を感じてしまうんだな。映画観ていてそんな気分にさせてくれると言うだけでも観る価値があるってもんだ。

 そしてこんな作品を作れるのはスタローン以外にはいない。スタローンは実に30年以上もアクションスターの筆頭に挙げられる人物で、そのネームバリューあってこそ、これだけの人達を集めることが出来たのだし、そしてそんなスタローンだからこそ、その思いに応えようとしてくれる人達がいることを思わされる。

 ただ、本作に関してはもうちょっと言いたいことがある。

 スタローン自身は、本作を相当な皮肉な思いを持って作ったのではないか?とも思えたりする。

 やや斜に構えて本作を見てみると、色々出てくる。

 まずタイトルである『エクスペンタブルズ』というのは「消耗品」という意味。ハリウッドにとってのアクションスターというのは、まさしく消耗品的な見方をされていた。そんな奴らを集めて映画作るとなれば、「俺たちは消耗品の集まりだ」と主張しているかのよう。

 物語は、極めて単純に見えるが、敵の首領であるはずの将軍の設定が面白い。実力で将軍の地位に就いたし、人望もあるのに、結局はCIA、つまりアメリカという国そのものによって一定の期待をかけられ、それを演じるしかない。まさにあの将軍の立ち位置は過去ハリウッドによって似合わないヒーロー役を強いられてきたスタローン自身そのものとも見られる。更に言うなら、2000年代になってハリウッドの映画がどんどん質が悪くなってきた事実というのは、ハリウッド映画の製作者が今や映画人ではなく、経済界の人に変わってきたと言うこともあるだろう。リメイクやアメコミヒーロー作品の量産って、実は映画人から出てくる思考じゃないから。これまで金のために我慢してやっていた事を、金なんか関係なくぶっ潰してやる。と言うエクスペンタブルズの行動は、ハリウッドに対する挑戦というか、相当な皮肉が込められてたのでは?

 まだまだある。スタローン、シュワルツェネッガー、ウィリスのスリー・ショットは、実はこの三人(にデミ・ムーアを加えた4人)は“プラネットハリウッド”というレストランの共同出資をしていたことがあって、ビジネス・パートナーだった。そんな三人が、腹に一物持ち、互いを全く信用せずに会話してるのは、なんかお互いに嫌味を言い合ってるみたいで…と言うか、絶対それ狙ってるだろ?

 個々の俳優で言っても、それぞれが何らかの皮肉的な役割を担ってる。例えばドルフ・ラングレン。この人は数々の映画の主演を演じているが、未だにその代表作と言われると、『ロッキー4 炎の友情』だったりする。彼がアクションスターの地位を築いたのはスタローンあってこそ。そんな彼がわざわざ裏切り者を演じるのは、やっぱり何かの皮肉が込められてる気にさせられるし、ジェット・リーが金に卑しいとか身長のことを度々口にするのも、どうしてもハリウッドだとアジア系俳優は出演料に関して渋られることもあって、アジア系アクションスターの主張を代弁してるような?そういう風に考えると、画面の端々に色々な皮肉っぽい演出があるので、その意味でも相当に楽しめる。まあ、ロバート・アルトマンとまではいかずとも、こう言う皮肉を作れる監督は今はとても貴重だ。

 そう言った皮肉部分を考えてみても、スタローンは監督として相当実力を付けてきた事を窺わせてくれる。これからまだまだ楽しい作品を作ってくれることを期待したい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)わっこ[*] MSRkb シーチキン[*]

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