コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(2010/英=米)

単体の大人向き映画としては充分なのですが、これが「童話」と言って通用するものなのかどうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 大人気シリーズの第7作目にして最終章の前編の映画化作。

 これまで原作がどれだけ長くても、無理して一本に収めてきた本シリーズだが、最終章の本作だけは2本に分けると言う方法が用いられることになった。この方法は決して悪くなく、最後の戦いを足早に終わらせることなくじっくり物語を見せる事が出来るし、その中で主人公達の葛藤も描くことが出来る。

 …一応それは分かってるつもりなのだが、この作品を本当にそうして良かったのか?本作を観る少し前に原作の方は読了したのだが、前半はほとんど物語としての動きが無く、追われながら分霊箱を探し回る主人公3人達の徘徊ばかり。こんなのを中心にしてしまったら、見所が無くなるんじゃないのか?

 そんな事前の心配をしていたのだが、実際に出来たものを見てちょっと驚かされた。

 本当に私が心配していたこと、そのものだったから。

 かなり演出力で飽きさせないように工夫はされていたけど、やっぱりこれ結構精神的に苦痛を覚えるレベル。

 もう少し話を進めさせるか、彷徨部分を短くするかしないと、少なくともこどもに見せられるような作品には思えない。葛藤を描くためにこれだけの長さが必要だというのなら、それこそ僅かな時間に内面描写を見事にした映画は山ほどある。はっきり言って本作は15分以上縮められるぞ。

 原作通りと言えばそれまでかもしれないけど、これ観てこどもが楽しめるとは到底思えない。

 ところで、こども向き。と言う事で考えたら、一作目『ハリー・ポッターと賢者の石』の当たりと較べると、随分本作は変わった。

 本作を俯瞰してみると、とても遠いところに来てしまった。と言う感じはする。  当初本作の原作はもっと素直な“童話”だった。ヴォルデモートの影が主人公三人組を時として脅かしていたとは言え、それよりもホグワーツの風物や、その中で行われている授業風景、クィデッチ試合。その中でよくある友達同士のじゃれ合いや反発と言ったものが内容の中心。

 そんな童話的物語が、7部目となると、ここまで変わるものなのか。とばかりにハードな展開となる。三人組も最早あどけない少年少女ではなく、髭面で裸で抱き合うビジョンを見るような間柄へと変化した。主人公達の成長に合わせるかのように物語が厳しくなったとも言えるか。

 正直このハードさが観ていてきつい。一作目のように、その世界に行ってみたいとか、魔法でこんな事が出来たら?と言う想像の入り込む余地は既に無く、眼前に広がるのはひたすら道を探して彷徨い続けるだけの姿。

 …ほんと、随分変わったもんだな。

 いずれにせよ最後までつきあうつもりでいるが。

 …そうそう。一つ本作で残念だったのがオープニングシーン。原作では、ハリーのいとこに当たるダドリーがたった一言だけだが喋るシーンがあった。物語には全く影響を与えないが、それを無くしてしまったのは勿体なかった気はする。結構重要な部分だと思ってるんだが。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)G31[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。