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[コメント] ノルウェイの森(2010/日)

菊地凛子は、よく言えば全ての作品が体当たり役。悪く言えば、変な役ばっかり。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 村上春樹の代表作が四半世紀も経ってからようやく映画化。

 これは無理もないことで、80年代の邦画というのは、監督の個性をいかに出すかと言う事が主眼だったため、小説をそのまま映像化出来る環境ではなかったから。実際『風の歌を聴け』なんかは原作は単なるベースであり、大森監督作品としか言いようがない作品に仕上げられていた。著者としてもあれを観た後では映像化に躊躇するだろうと言う出来だった(念のため言わせてもらうと、作品自体はそんなに悪い訳ではないが)。

 そして今になって、ついに村上春樹の代表作が映画に。しかも監督はヴェトナム人のトラン・アン・ユンにより。

 それで出来の方だが、正直驚いた。

 外国人監督が、しかも40年前の話をどう作るんだ?と思ってたけど、逆に外国人だからこそこれだけ出来たのかもしれない。

 そもそも学生運動の雰囲気なんて、その当時を生で味わった人でなければ作れないだろうという先入観があったのだが、それはつまり監督自身の過去を出すことになってしまい、悪い意味での作家性を前面に出す結果になりかねない。

 それよりむしろ文章から受けるイメージを素直に映像化するのは日本人監督には難しかったかも知れない。ここにトラン監督を起用したのは見事としか言いようがない。  物語の根幹をなすのが性であるため、作りようによっては目も当てられないようなものになる可能性はあったが、物語の持つ透明感をそのまま、どんなきつい性的な発言も決してドロドロにすることなく上手い具合に映像化してくれていた。その意味ではほんとに見事な出来である。

 強いて言うなら透明感のある原作を下敷きにしただけに、寮の雰囲気が明るすぎるところがネックな位か?  ただ、長さのお陰で観終わって どっと疲れを覚えたことと、この主題自体が好みじゃないと言う自分自身の問題で、もう一歩。あと20分短かったらベストだったと思う。

(評価:★4)

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