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[コメント] ロビン・フッド(2010/米=英)

歴史物の楽しみ方は、どんだけはったりかまして、力業でリアルに魅せるか。間違いなくスコットはそれが出来る監督。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 そもそも歴史なんてものはいくらリアルに作ろうとも、実際に現場を見てる人がいない以上、絶対偽物なのだ。歴史作品はドキュメンタリーとは違うのだから当然嘘が入るし、更に物語を面白くするためには物語を創造して入れてやらねばならない。そこら辺は完全に嘘っぱちになる。

 そう言った嘘をリアルに見せる力量が監督には求められるのだ。こう言うことが出来る人は昔の監督には何人もいたものだ。現代では少なくなったが、その中で第一人者と言えば、やはりこの監督だろう。

 この人の作る歴史物は大作感溢れるものだが、それを可能にしているのは、巨費の投じ方ではなく、必要な部分に必要なものを投入し、更に古典的な歴史大作作品の良さをきちんと投入している部分にある。

 それなりに実力のある俳優を男女用意して、その恋物語を歴史に組み込んで展開させ、見せ場にはふんだんに人間を投入する。

 そう言った生の人間に任せるところをきちんと踏襲した上で、必要とあらば最新技術を使い、なるだけ金をかけないようにして作ってる。

 更に割とコミカルな要素も要所要所に取り入れることで、ダレ場も丁寧に作ってくれるので、映画単体として本当に上手く作ってある。よく勉強してるよ。

 それと、これも大切なのだが、歴史を下から観る視点をきちんと保持してるのも上手い。ロビン・フッドという存在はまさしく大衆の英雄なので、それが上手くできる存在ではあるが、彼の周囲で政治家達が虚言を繰り広げ、結局どうあっても庶民が苦しめられるだけ。と言う視点を中心に据えている。最近の作品ってこの視点が見えないことが多いので、なんかこう言うのを見せられるとほっとした気分になる。やっぱり映画は反抗のものであって欲しいと言うのがわたしの望みだし。

 歴史の改変の仕方が小憎らしいところで、嘘は嘘なのだが、それをリアルに見せてくれてる。

 今回歴史的な嘘つき部分は、ロビン・フッドにロングストライドという名字を与えたこと、年代をずらすことによってロビンをリチャード1世軍に従軍したことにしたこと、それとフリーメイソンの教義をさりげなく取り入れたことだろうか。これらはきちんと物語に必要な部分として用いられ、自由というものを求める庶民からの視点を本当に上手く取り入れてる。これは脚本の巧さだろうけど、それをきちんと映像化出来る監督の力量あってのことだ。

 そんな意味で本作は監督の力量を存分に発揮できた作品と言っても良いだろう。

 あと、細かいところで狙ったのかどうか微妙なところだが、最後のドーバー海峡を挟んでのフランスとイングランドの会戦シーンで『エリザベス ゴールデン・エイジ』(2007)と同じ構図を取ったのは笑えた。ブランシェットに同じ場所で同じような登場の仕方をさせてるもんな(3年後に300年前の歴史を再現したってのも面白い)。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)りかちゅ[*] Orpheus[*]

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