コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011/米)

このポジティブさは今までにない新しい風になりそうだ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作の特徴は、物語が基本的にポジティヴ・シンキングで描かれているという点にあるだろう。これは本作の大きな特徴であり、成功点である。

 超能力ものの作品だと、大概は主人公の描き方はネガティヴである。望んでもいない特殊能力を何者からか勝手に押しつけられ、それを持て余すのが基本的な超能力作品の作り方。どれだけ人を助けようとも、地球の危機を救おうとも、その時には協力した人間からやがて石もて追われるのが超能力者の宿命とされる(『座頭市』とか『木枯し紋次郎』にも通じる)。本作も作りようによっては、そっちの方向性に持っていくことは出来たし、その方が簡単だっただろう。単純にエリックを話の中心にすれば良かっただけだ。だが本作のウェイトは明らかにチャールズの方にかかっている。ミュータントを世の役に立てようとする理想主義のチャールズは、どんな事があろうと、決して絶望しない。なんかここまでやると、チャールズには心に欠陥があるんじゃないか?と言うレベル(原作を読んでいる人なら分かるが、実際は彼の幼少時代は他のミュータント同様いくつもの迫害を受けてきており、特に家族関係はぼろぼろと言う裏設定はある)。その辺をわざと曖昧にして作ったのは、一つの狙いだろう。お陰でこの物語は決してマイナスの方向性にぶれることなく、チャールズの理想論が最後まで有効に働いている。さすがあのポジティヴ・シンキングの固まり『キック・アス』を作り上げたヴォーン監督。見事な出来である。

 又、先発の監督たちにきちんと敬意を表している描写がそこかしこに出ているのもポイントが高い。チャールズのミュータント捜索の際、見知ったキャラの幼少時代がちらっと出てきたり、ウルヴァリン役のジャックマンにカメオ出演させてみたり、はたまたチャールズとエリックの仲違いが決してマイナスだけではないと言うこととか(『』で二人が揃ってジーンの家を訪れるシーンがあったけど、それはこの後も二人が協力する事があったと言う伏線になってる)。そういった細かい配慮も行き届いている辺り、監督と脚本の連携の巧さを感じ取ることが出来る。『キック・アス』の時もただ者じゃないと思ったけど、本作で見事に才能を引き出して見せてくれた。

 そういう意味で本作はかなり満足度は高い。

 ただ、本作で評価が今一つ伸びなかったのは、これまでの作品とは異なり、終わりが見えていたため、プログラムピクチャーでしか無かったと言うことだろうか。プロフェッサーXとマグニートは何があろうと最後は袂を分かち敵になるし、ミスティークはマグニート側につく。そこに向かっているのが分かっているので、全く驚きが無かった。

 後、あの予告は失敗だな。正直あの予告観たら、物語が最後まで丸分かり。良い作品だけど、驚きが全く無かったので、点数はやや低めとなってしまう。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ロープブレーク[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。