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[コメント] リアル・スティール(2011/米)

ファミリー映画としても、ダメ男の再生物語としても観られるバランスの良い作品。勿論ロボット格闘の見所もちゃんとあり。秀作プログラムピクチャーと言って良いんじゃないかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作のトレーラーは物語そのものをフローで表したもので、実際中身もトレーラーで観たものそのまんまで展開する。身勝手なロボットトレーナーが、捨てたはずの息子を引き取ることになり、さらに未知の力を秘めたロボットを偶然拾うことによって生きる意味を見つけていく。結局これはハリウッド作品で昔からある定番を焼き直しただけで、それにロボット格闘技という新味を加えただけの作品とも言えるし、事実その通りの物語が展開していく。普通考えて『オーバー・ザ・トップ』か、かなり上手く作って『チャンプ』の二番煎じにしかならない。

 で、そんな皮肉を言う私自身がいそいそと劇場まで足を運んだのは、こういうベタな家族再生物語が見事なまでに私のツボだという一事である。これ以上もこれ以下も理由はなく、トレーラーを馬鹿にしつつ、あのトレーラーだったから観に行ったという、どうしようもない理由である。どうにも「親子の再生物語」にはツボ押されまくるもので…

 それで、本作には心地よく裏切られた。確かに物語のフローは『チャンプ』だったかもしれないが、演出や細かいところはむしろ『ロッキー』に近く、挫折を繰り返し続けた男が誇りを取り戻す物語が心地よく心に入ってくる。

 なにもかも失っても、誇りだけは捨てられない男が、周囲からどんなに馬鹿にされてもその誇りで生き抜こうとする姿はやっぱり格好よく映るものだ。

 この物語のおもしろさは、壁を乗り越えてプライドを守り、そこで自分自身を取り戻すという構造なのだが、それが二つあるということになる。一つはロボットトレーナーとして、夢見るチャンピオンとの対決だが、もう一つ、彼は元々ボクサーであり、その夢が破れたからロボットトレーナーをしていたという点。トレース機能を持ったアトムというロボットを手に入れることによって、彼はロボットトレーナーとしてだけでなく、ボクサーとしての誇りを同時に取り戻したのだ。二重に誇りを取り戻し、さらにこどもの心を掴む。大人の男として一番ほしいものを、彼は手に入れているのだから。  なによりその姿に自分自身を重ねることができたのが一番よかったところだ。少なくとも大人が観ていて、これはうまいこと自分自身の弱さと強さを見させられるように作られているため、大人もこどももきちんと楽しむことが出来る。

 そんな意味では、プログラムムービーとしては、予想以上のスマッシュヒットと言えよう。

 ところでジャックマンは見事に体作ってきたな。自堕落な生活してる主人公演じるのにあんなに引き締まった体作る必要はなかったと思うんだが。さらに劇中あんなモロ肌脱ぐ必要もないし…ひょっとしてこれって「俺はまだウルヴァリン演るぞ」という意思表示?

(評価:★4)

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