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[コメント] 仁義なき戦い 代理戦争(1973/日)

深作監督はよく分かってらっしゃる。本作はシリーズで最も魅力的な人物を徹底的に描くことに成功してます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 第2部である『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973)が外伝的な作品だったため、実質的には本作が第2部となる。しかし暴力団の世界とは摩訶不思議。タイトルにあるとおり「仁義なき」で、実際それでのし上がったのに、心のどこかで「仁義」を信じ、筋を通そうとする広能。その人の良さにつけこまれ、一旦袂を分かったはずの山守に又しても利用されてしまう。

 1作目『仁義なき戦い』(1973)であれだけはっきりと決別したはずなのに、まるでそんなことなど無かったかのように笑い顔を見せながら近づいてくる。それで広能も良いように使われてしまう訳だが、むしろ本作では広能よりも山守の方がむしろ魅力たっぷりに見えてしまうのが面白い所。

 これはおそらく狙ってのこと。『仁義なき戦い』で悪役として登場したはずの山守が、金子信雄の好演もあって大人気になってしまい、これはもう、こいつを徹底的に強調してみよう。という深作監督の狙いが見事に当たったのだろう。

 実際本作の主役は山守だとしか思えないような作りになっている。自分の野望を実現させるためには人に頭を下げたり涙を流したりすることに全く躊躇がなく、それでちゃっかり実を全部取ってしまう。本来憎々しい役柄のはずなのに、金子信雄が演じてると、妙に魅力が出てくる…これも人徳かね?

 勿論それだけじゃない。心のどこかで確かに「仁義」なるものを信じてる節がある広能も、ちゃんと逃げ道を用意してたりと、したたかさを見せ始めているし、利用されっぱなしのように見えて、その中でしっかり自分の組を大きくさせることに成功させてるし、鉄砲玉役の小林旭も存在感ありまくり。

 それに山守を中心にすることによって、話もより広範囲に、戦略的なものへと移っていて、裏切りに次ぐ裏切りがとにかくてんこ盛り。物語としても充分すぎる面白さを見せてくれてる。

 以降徐々に沈静化していくシリーズではあるが、本作を含めて1〜3部は間違いなく傑作と言えよう。

(評価:★4)

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