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[コメント] ウルヴァリン:SAMURAI(2013/米)

このシリーズ大好きなんだけど、この作品だけは良く言えない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『スパイダーマン』(2002)に並び立つMarvelの代表シリーズ『X-メン』(2000)。スピンオフを含めこれまでに既に5作が作られている人気作だが、それら一つ一つがかなり質が高かった。それぞれにミュータントとして生きることの問いかけがなされており、そのアプローチも様々。

 その中で中心となることが多いのがウルヴァリンだった。極端な回復能力と長い命。更に記憶喪失と言う足枷をかけられた存在で、しかも関わった全ての物語で深い喪失感を味わう事になる。彼が常にぶっきらぼうなのはそんな苦しみにおいて。そんな深いキャラだけに、作り手も愛情を持って造形していたのだろう。スピンオフ作も最初の作品がウルヴァリンだったのも肯ける。

 そしてスピンオフも三作目となり、再びウルヴァリンを主人公とした作品が作られる!しかも舞台は日本で!これはコミック版のヤシマ=シルバーサムライが出てくる話で、かなり人気の高い物語(ちなみに日本のアニメ会社マッドハウスが一連のマーベル作品を制作したことがあったが、その時もこの物語を作ってた)。

 と言うことで、かなりの期待作ではあった。

 …で、問題となる出来は、はっきり言わせてもらえれば、「シリーズ最低作」としか言いようがない。

 日本を敢えて誤解させたまま、かつてアメリカ人が考えていたジャパンにしたのは悪くない。これくらいむちゃくちゃにしてくれた方が興味もってもらえる位だから。要人警護にはもちろんニンジャが行い、ほぼゾンビ並みの体力を持つヤクザ、敵の首領はお城に住む。まあよくここまでやってくれたと感心出来るくらいだ。

 それは良くても、肝心の物語が酷い。

 今回ウルヴァリンがやってることは、ステロタイプのヒーローそのもので、キャラの深みは一切ない。目の前の危機を順番にクリアするだけで、そのモチベーションはお姫様を守る騎士そのもの。今時こんな馬鹿みたいな単純な物語見せられるとは思ってもみなかった。シルバーサムライは出てるにしても、これじゃ単なるロボット。シルバーサムライとなるヤシマの悪人っぷりが薄っぺらい。せっかく出した真田広之が単なるチンピラキャラ。力入ってるはずのアクション部分がお粗末。どこを観ても褒める要素が見つからない。それに明らかに安普請のアクション描写も今ひとつ。

 これらのどれかをきちんと作ってくれれば、まだ褒めるところ見つかったんだが、ここまで褒めるところがないと、流石に呆れる。オリジナルの物語を曲げてもシルバーサムライ役は真田広之が演じさせるべきだったんじゃないか?正直、ジャックマンと真田広之が殺陣でぶつかるシーンが一番楽しみだったから、それを裏切られたのが痛い。

 正直、文句以外出てこない。

 それでも強いて良いところを言うなら、この作品の位置付けだろうか。一応『ファイナル ディシジョン』(2006)で完結したはずの『X-MEN』が、まだ終わっておらず、ちゃんと続編を考えていることが分かったことだけが成果か?ことある毎に夢でジーンが現れるのと、あれだけ完璧に死んだと思われたプロフェッサーXが、実は…と言うラストシーンは少し嬉しい。でもこれは本編とは全く別なこと。その程度で評価を上げるほどの事はない。

(評価:★2)

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