[コメント] マイティ・ソー ダーク・ワールド(2013/米)
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作品の構造自体は実に真っ当なヒーロー作品に仕上がってる。物語自体は新たな強大な敵が現れ、ヒーロー単独では敵わないほどの敵に、多くの仲間が協力して対抗するという話となる。その中にはかつて自分を裏切った弟のロキもいて、その和解と献身が見所となる。勿論主人公ソーの危機に次ぐ危機に、愛する女性との関係が深まるとか、昔のハリウッド映画の萌え要素てんこ盛りとなってる。
だから実に真っ当な作品のはずなのだが、本作を「真っ当」と言うには憚れるほど歪んだ作品でもある。
本作の主人公はソーである。彼はヒーローそのもので、全くその行動には陰りがない。徹頭徹尾ヒーローとして行動する。そんな彼を主人公にするのは当然だが、この作品にはもう一人の主人公が存在する。それが、コンプレックスの塊であると共に奸智に長けたソーの弟ロキだった。
ロキはシリーズ前作である『マイティ・ソー』では兄ソーを罠に陥れた人物で、更にMCU第6作となる『アベンジャーズ』でチタウリと組んで地球を攻めた張本人。悪人そのものの存在である。
このロキを表のヒーローであるソーに対応する裏のヒーローとして設定したところに本作のユニークな点があった。
地球攻略が失敗して幽閉されてしまったロキは、そのままでは永遠に等しい時間を幽閉生活を送らねばならない。ところが新たな敵の出現によって半ば無理矢理戦いにかり出されてしまう。それで汚名挽回とばかりに奮闘する。その健気な姿は、このキャラが単なる悪人では無かったことを強く印象づけた。
そしてラストのオチで彼はダークヒーローとして見事なキャラ立ちをしてみせた。まさかこんなどんでん返しが待っていようとは思いもしなかったため、これまでロキに持っていたイメージは一気に変えられてしまった。
ロキを演じたヒドルストンの陰のある演技が見事にはまって、ロキは大変印象深いキャラクターに変わっていた。
この一点が本作の最大の面白さとなるだろう。結局終わって気づくのだ。本作の主人公は実はロキだったと。
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