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[コメント] 舞妓はレディ(2014/日)

映画的意義深さも含めて、充分“アリ”。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 周防監督によるミュージカル。長年暖めてきたという企画だけに、話はよく練られているし、何よりミュージカルシーンが耳に残って、とても楽しい作品に仕上げられている。  タイトルからも分かるとおり、一応物語は『マイ・フェア・レディ』(1964)の翻案で、物語もそれに則ってはいるが、あの作品とは違ったところに焦点が当てられており、これはこれで意味深い作品かと思う。

 オリジナル版ではイギリスの階級社会を前提としてイライザを社交の花形にしようとするヒギンズが、徐々に彼女に惹かれていくという過程を楽しむ作品だったが、本作は恋愛要素を排除して、京都の花街に焦点を当てたのが本作の特徴となっている。そのためこぢんまりしてしまったが、逆にそれが良かった感じ。

 本作の主役はもちろん春子演じる上白石萌音と言う事になるのだが、むしろこの作品は花街そのものが主役と言って良い。これを変な風に掘り下げたら、花街の悲惨さに入り込みそうだが、そこも排除して、華やかさと、そこに身を置いた人々の過去の恋愛模様をモザイク的に描写することを中心としていて、夢を売る街を舞台とした一種のファンタジーものに仕上げたのが監督の上手いところ。

 そのため、春子本人よりもそれを取り巻く人々と、花街の蘊蓄的な部分が強く描写されていて、そこが不思議な魅力になってる。ちょっと花街の後ろをのぞいてみたいという好奇心をちゃんと満足させてくれる。

 役者もその辺はよく心得たもので、出る時は出、引く時は引き、舞台の魅力を損なうこと無く、心地良い時間と空間を演出してくれた。

 だから、後は観てる側の好みだろう。

(評価:★3)

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