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[コメント] スノーデン(2016/米=仏=独)

監督の思い込みが鼻についてしまって素直に楽しめなかった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 歴史上のスキャンダラスな事件を追った映画はたくさんある。基本的に世を騒がせた人物を題材にすると、スキャンダルを追うことになるから。監督自身もこれまで何作ものスキャンダル事件を起こした人物を題材にして監督やら制作やらしてきている。

 だが、そう言った事件を追った場合、時間の経過というのがとても重要な意味合いをもつ。スキャンダル事件が出てから十年以上も経過すると、世の中の認識が高まり、一つの固定化した評価というのが出てくる。その固定化した評価に対してどう創作するかというところが映画的な面白さにつながっていくのだ。監督自身の作品としては、やはり『JFK』や『ニクソン』など、固定観念を突き崩すように作られた作品はなかなか面白かった。成功したとは言わないけど、『アレキサンダー』も固定化したアレキサンダーの姿を大きく変えようとしていた意欲は買える。一概に監督は、歴史上の固定観念を批判的に捉える作風は手慣れたものだし、作風としては手慣れたものとなる。

 一方、歴史上のスキャンダラスな事件を扱うに、監督はかなりホットな話題をセミドキュメンタリーのような作風を使う事もある。その代表として『ブッシュ』があるのだが、この場合、歴史的な評価が固まってないだけに、敬意を欠く独断と偏見がいきすぎてしまった感がある。それで客観的さを失い、監督の政治的主張そのものが出てしまい、それが鼻についてしまう。

 そして本作は、つい3年前の事件の話だけに、『ブッシュ』同様に偏見が強すぎるという印象を受けてしまう。

 スノーデンがやったことは確かにCIAに対する告発であり、それはアメリカという国に対する批判が込められているわけだが、巨大権力としてのアメリカがどれだけ悪かろうとも、単純にその告白者だけが正義と言えるのか?

 スノーデンを単純に正義の人としてしまっていいのかどうか。その部分の批評が見られないのが本作を観ていて居心地の悪さを感じさせるところである。

 そもそもこのようなスキャンダル事件は映画にするよりもドキュメンタリーにするなり、文で書くべきものではないだろうか。映画にするにしても、早すぎるというのが一番の問題だと思われる。

 そのためにどうにもはまりきれずに終わってしまった。残念。

(評価:★3)

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