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[コメント] シェイプ・オブ・ウォーター(2017/米)

斜に観るなら、歴代ディズニー・プリンスを体現したダーク・ファンタジーとも言える。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1992年に『クロノス』でデビューして以来、一貫してモンスターを描き続けてきたデル・トロ監督が次の素材に選んだのは半魚人だった。

 それを最初に知った時、「やっぱりデル・トロは変わらない」と微笑ましく思っていたものだ。更にネットでインタビュー記事を読んでみる限り、『大アマゾンの半魚人』(1954)にも思い入れがあるだけでなく、なんと「ウルトラQ」および「ウルトラマン」に登場したラゴンに多大な思い入れがあるらしいことが分かる。

 なんだろうこの安定感。だからこの監督は大好きだ。

 映画としての作り方はとても手堅い。

 モンスターと人間の恋愛というシチュエーションだが、ややSF寄りにすれば、これは障害を持つ人間同士の恋愛劇としてちゃんと機能するし、冷戦下のアメリカの国内事情があたかも現代のアメリカを象徴するような時事性もしっかりしてる。又映画として、生命に対する尊厳とマイノリティに対する温かい眼差しに一貫されている。そして『パンズ・ラビリンス』同様に、世界の潮流をしっかり捉えて作った作りもある。

 そう言う意味ではこれまでの映画史の中で培われてきたリベラル派の映画作りに則った立派な作品である。

 一方怪獣映画としても、これはこれで充分な出来。監督のこだわりだろうか、半魚人は決して姿を変えることなく、そのままの姿で愛される存在となっていたところが何より素晴らしい。これまで監督といつもタッグを組んでモンスター役を演じていたダグ・ジョーンズにとっても初めての恋愛ものになってる(そう言えばダグは『ヘルボーイ』でも半魚人のエイブを演じていた)。

 敢えて文句を言うとすれば、ストーリーラインがとても単調だったことと、個人的にネコを虐待する映画は容認できないという点くらい。

 …というところが、私なりの本作評になるが、ここからは少し脱線して本作のもう一つの込められた意味というものを考えてみたい。

 公開前から本作は『美女と野獣』(1991)との対比で語られることが多かった。折しも2017年は実写版の『美女と野獣』(2017)も公開されており、確かに良い対比になってる。

 私が書いた『美女と野獣』評を読みなおしてみたら、「そもそも野獣が格好良すぎて、別段このまま不細工な人間にならんでもよくね?」と書いてあって、実際、あの作品でも人間に戻す必然性って全くなかった気がしていた。その意味では、半魚人がそのままの姿でイライザと愛し合って結ばれるというのは、狙って作ったと思えてしまう。

 ただ、これで『美女と野獣』との関わりは分かるけど、それだけでは無かった気がする。実は他のディズニー作品にも関わりも感じさせる。

 まずイライザは靴に対して強い執着心を持っていて、声を失っているという事実がある。ラストでも実は…という描写があるので、これはまんま『リトル・マーメイド 人魚姫』(1989)の設定の引用と取る事が出来るだろう。例えばあの映画でアリエルがした行為の報いが声を失うことだけでなく、若返りと記憶を失うことがセットだったら?イライザ視点で見るならば、本作は『リトル・マーメイド』の翻案と言っても良い。

 他にもある。この世界に疎外感を感じるイライザだが、それなりに楽しい生活も送れている。それは周囲の人たちが温かく迎えてくれることだが、それは『白雪姫』(1937)で描かれる白雪姫とドワーフたちの関係に似せているようでもある。

 王子のキスで自分を取り戻すのもそれに準じてるとも言える。これに関しては『眠れる森の美女』も入るだろう。

 イライザが半魚人を海に帰すのに期限を切ったシーンなんかは『シンデレラ』(1950)だろう。楽しい時間はやがて終わりを告げる。そしてその終わりは自分で決めねばならない。もしその時間を一瞬でも間違えてしまったら取り返しの付かない事態を引き起こす。ここでもラストシーンで靴が関わってくるのも特徴であろう。

 …こう見てみると、歴代のディズニープリンセスを見事に体現してる気がするんだが、見事に全部アダルティに皮肉を入れてる。そう考えると、本当にこれダークファンタジーなんだな。

(評価:★4)

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