[コメント] ブラックパンサー(2018/米)
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出来としては、思った通りとてもストレートなヒーローものである。
アフリカが舞台と言う事から、現代風よりももっと野性的な雰囲気は持っているが、強大な力を持ったヒーローがライバルとの戦いを通して、王として本当に大切なものとは何かを学んでいく。成長型のヒーローとして本当に真っ当な作品だった。
ヒーローものの演出として特出すべきものも数点ある。
本作ならではの部分としては、登場人物の大部分がアフリカ系の役者で占められていることから、生身の肉体を使ったアクションシーンに力が入っていることがある。CGを多用した超絶アクションよりも、生身の人間として真っ正面からの一騎打ちが多いので、昔からのハリウッド作品を観てる感じがして、落ち着いて観られたのは良かった。
個人的に言わせてもらうと、前半のクライマックスであるカジノでの立ち回りはとても嬉しかった。狭い店の中で、そこら辺にあるものを武器にしつつ、立体的に戦う演出って、1990年代のブロスナン時代の007でよく使われていた手法。懐かしいというか、それを分かって取り入れている監督のケレン味がたまらん。
ただ、本作がこれだけ評価されるのは、物語や演出ではない。圧倒的な設定の良さによる。
言うまでも無いが、アフリカ系の監督と、主人公で作られたスーパーヒーロー作品は初めてである。圧倒的に白人優位で作られる映画の中にあって、これは画期的なことだった。2017年には女性監督と女性主人公の組み合わせで作られた『ワンダーウーマン』(2017)という傑作があり、それと合わせて考えると本作はとても面白いものとなるだろう。
そして監督は敢えて作っているのだろうが、本作は往年のブラックスプロイテーションを上手く継承しているということが一番だった。
ブラックスプロイテーション映画については既に『黒いジャガー』(1971)で書いたので、ここでは述べないが、その嚆矢となった作品が日本語から逆に訳すると「ブラックジャガー」で、本作が「ブラックパンサー」というのが良い対比になってる。
監督・主演そしてほとんどの登場人物がアフリカ系で占められ、下手なルサンチマンなしに彼らの中だけできっちり作品を作る姿勢は実に素晴らしい。
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