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[コメント] 来る(2018/日)

作品自体は悪くないけど、これだけの俳優陣と監督が組んでこの程度なのが寂しい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 角川は30年ほども前からホラー小説の懸賞をやってて新人発掘に力を入れているが、その中で多くの優れた小説家を排出している。本作の著者澤村伊智もそこから登場した作家で、そのデビュー作「ぼぎわんが、来る」が初の映画化作品となった。デビュー作を中島哲也監督に認められたと言うだけでももう成功者と言って良いだろうし、この豪華な俳優陣を見よ!というほど力のこもった作品になった。

 …の、だが、出来た作品が今ひとつぱっとしない。

 いくつも理由は挙げられるが、一番重要なのは、小説から映像化への転換の失敗だろうかと思う。

 確かに原作は途中で主人公が変わるというか、主人公が誰か分かりづらい構造を取っているし、文章だから分かる伏線や謎解きも結構あるので、映像化は相当難しい作品だった。

 だが難しいからこそ、中島監督なら想定以上のものが作られると思っていた。これまでの中島監督は原作以上のポテンシャルを引き出した作品を数多く作り上げている。だからこそ期待していた。

 だが実際出来たものは少々疑問。

 全般的に言うならさほど悪くない。平均点くらいは上げられる作品だろう。

 でも、何点も引っかかるところが出てきてしまう。

 特に問題は役者関係。監督の人徳か、日本映画では主役クラスが何人も出てくるのだが、その使い方が今ひとつにしか見えない。

 最初に主人公の交代劇。元々の主人公は田原秀樹が途中あっけなく死んでしまうというのがストーリー上の衝撃。特に主人公が妻夫木聡という一流役者なので、てっきりこの人が良い人と思ったのに…と、いう演出が出来ていれば良かったのだが、最初から小悪人として描いてしまったため、この時点で驚きを失わせてしまった。あくまで普通の良い夫であり父であったと見せておいて、事件後に「その正体は」と持って行くべき部分だった。

 その後を継ぐように野崎役の岡田准一と香奈役の黒木華、そして霊媒師の松たか子が中心になるのだが、特に原作では仲介役以外の存在感が無かった野崎が妙に存在感が高い。結果として原作よりも活躍の場が多くなったが、それが違和感になってしまった。

 全般的に言って、良い役者を使い潰した感がある。

 演出不足は最後まで続く。ラストの霊対決もあんなに派手にする必要性あっただろうか?見栄えだけであのシーン入れたとすれば無駄すぎる。ラストもちょっと違和感ある。

 全般的な問題より、細かいところで色々不満が残るものになってしまった感じ。

(評価:★3)

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