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[コメント] サスペリア(2019/伊=米)

オリジナル版に対する敬意もちゃんとあって、これを観るとオリジナル版の良さも再認識できる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 元々のサスペリアは確かにホラー作品の中では名作と言われるが、なんせ元がイタリア製のホラー。低予算だし決して脚本が練れてる訳ではない。悪く言えば突出した雰囲気の演出だけで名作になったとも言える。

 それで本作が目指したのは二つ。

 一つはオリジナルに匹敵する雰囲気作り。ここでグァダニーノ監督を選んだのは見事な采配。監督は現時点で最も耽美系作品を上手く作れる監督といえる。しかもイタリア人。この人が作れればねっとりとした雰囲気のオカルトホラーが生まれるのは間違いないし、まさにサスペリアはぴったりな素材だった。

 二つ目として、オリジナル版では少々いい加減なところがあった設定の見直しと、つじつまの合った脚本。

 ホラーは多少脚本につじつまが合ってなくても受け入れられるし、そっちの方が面白いと言うのもある。実際オリジナルはつじつま合ってないところだらけだったが、それをきちんと分かりやすく整理した。普通のバレエ学校を暗黒舞踏を教える学校に変えたのもオカルトホラーとして正しい選択だ。

 この一点目に関してはともかくとして、本作の最大の功労点は二点目にある。

 まず舞台を冷戦下のベルリンに定めたことで、ぐっと閉塞感が高まったことがある。閉塞感が強い中でマイナーな暗黒舞踏学校を舞台にすることで、更に閉塞感が高まってる。精神的な圧迫が強いので、ホラーの舞台としては最高になってる。

 オリジナル版サスペリアは恐怖演出を優先するあまり、脚本に結構穴が多く、犯人とは無関係と思えた人が全くの伏線なしに実は…というのが唐突に出てきたりもした。そのあたりは恐怖演出のスパイスとして考えれば良いのだが、納得いかなかったのはラストシーンとなる。

 ラストですべてが終わってバレエ学校を出た時のスージーは、未だ混乱の際にある学校を背にしたまま明らかに笑顔を浮かべていたのだ。

 あれほど恐怖のどん底にたたき落とされ、それこそ命からがらで、しかも他の人たちを放って逃げ出したスージーに笑う要素はないはず。この点に関して色々と議論を呼び、その真実は分からないままだった。勝手な推測だが、あれは作り手側ももあまり意味考えずに作ったのだと思うのだが、あの違和感があってこそ作品は名作たり得た。

 この点をはっきりさせたのが本作の最大の特徴点と言える。スージーがまさにこの学校に入ってきた理由と、この儀式において彼女がどんな立ち位置にあるのか。まさにこの結論を出すためだけに本作は作られた意味がある。

 本作のラストがあったお陰で、オリジナル版が私の中でストンと納得いくようになった。オリジナル版を補完するという意味だけでも本作は観ておくに値するし、演出の妙な淫靡さがオリジナル版よりもねっとりした感触で楽しめる。

(評価:★3)

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