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[コメント] ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019/米)

見所は一つしかない。でもそれを観たかったのだから大満足。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前作『GODZILLA ゴジラ』はミスリードによって、ゴジラは凶悪な怪獣ではなく、むしろ世界を維持するための存在というオチが付いたが、これはこのレジェンダリーシリーズの方向性を形作った。

 これまでゴジラのシリーズでは、基本的にゴジラは人類の敵であり、地球を破壊する存在だった。そのためこのモンスターバースはこれまでのゴジラシリーズとは全く逆な存在となった。

 そのため物語上明確な悪役が必要となる。前作『GODZILLA ゴジラ』ではムートーがそれに当たるが、本作ではライバルキャラとして最も人気のあるキングギドラを登場させた。基本設定では怪獣は地球の環境維持をするワクチン的な存在だが、キングギドラだけは宇宙から飛来したもので、地球産のものではないし、これまでのシリーズでゴジラとキングギドラは一切手を組むことなく、一貫してライバルキャラなので、ゴジラの相手をするのはぴったりな存在だ。

 基本的には本作は「ゴジラ対キングギドラ」と言って良いくらいに二体の怪獣の激突に特化した作品となる。怪獣プロレス好きにとっては、これほど高揚するものはない。

 それに、昨年公開された『GODZILLA 星を喰う者』(2018)ではせっかくキングギドラ出したのに、全然活躍させられずにストレスが溜まってた身としては、ゴジラとキングギドラの激突が観られただけでもう充分。

 正直な話を言えば、これでレビュー終わってもいい。だって本当にそれだけしか見所ないんだから。

 だがそれではレビューとしてどうかとも思うので、もう少々、これまでのゴジラシリーズの兼ね合いで本作を語ってみたい。

 ゴジラという怪獣映画は長く作られてきたため、ゴジラの存在についても様々。もちろん最初に登場した『ゴジラ』(1954)は完全に人類の敵だった。その存在感故に名作ともなったのだが、続編を作る際にはこのままだと作りにくくなってしまったため、人類を気にもせず、他の怪獣戦う事を目的とする乱暴キャラ、そして一応人類を守る側に入っていく。昭和の後期作品はゴジラはヒーローのアイコンになってしまった。

 その後、平成シリーズとも呼ばれる『ゴジラ』(1984)によって仕切り直しとなり、このシリーズではほぼ一貫してゴジラは人類の敵という姿勢を崩さなくなった。VSシリーズでは、タイトルの「VS」の後に続く怪獣の方が人類の味方をしているパターンが多くなっていく。

 更に仕切り直しのミレニアムシリーズと呼ばれる『ゴジラ2000 ミレニアム』(1999)以降の作品は、一本ごとに仕切り直しでゴジラを基本的に敵として描くようになっていった。

 その後完全仕切り直しで『シン・ゴジラ』(2016)があって、これで日本で作られたゴジラは現時点で最後になってる。

 そのため本作は昭和シリーズとだいぶ似通っている。ゴジラとラドンとキングギドラが出ることから、基本は『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)となるが、多数の怪獣が登場して戦い続けるという『怪獣総進撃』(1968)にも近い内容になる。

 更に『怪獣総進撃』はお祭り感が高い作品だったが、その後の北村龍平監督の暴走作品『ゴジラ FINAL WARS』(2004)があって、むしろ本作はそっちの方に近い感じである。

 そもそも『FINAL WARS』自体が『怪獣総進撃』を多分に意識してる感じがあって、その意味では本作は順当な進化の過程とも言える。『FINAL WARS』の場合、最後に「おお!キングギドラが出た!」と思ったらちょっと違ったカイザーギドラで、がっつんがっつん殴り合うだけの戦いになってしまったためにやや不満があったが、本作は最強の敵として完全にキングギドラなので、その意味でもありがたい。

 強いて言うなら、キングギドラは制空権を取って終始ゴジラを見下ろして戦おうとし、それを引きずり下ろすための努力というのを観たかったところもあるんだが、それは個人的な趣味の領域だろう。

 あと、本作では全く語られることがないのが人間ドラマ。それなりに盛り上げようと考えているようなのだが、怪獣をあまりに中心におきすぎたお陰で何もかもすっかり色あせてしまったのがちょっと残念。

 芹沢に関してはまあともかくとして、人類を裏切ったエマに関してはその説明もモチベーションも描かれないため、なんでこんなことをした?という疑問に一切答えてない。その辺不必要と割り切るのかどうかで本作の評価は変わるだろう。

 その辺の問題はあるものの、私に関して言わせてもらえれば、本作はとても面白い作品だといおう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)月魚[*]

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