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[コメント] バード(1988/米)

飛べなかった“バード”の話。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 “ヤードバード”の愛称を持つ、“ビバップ”というジャズジャンルを確立した天才サックス奏者の一生を描く作品で、ジャズには並々ならぬ愛着を持つイーストウッド監督によって撮られた作品。俳優としても監督としても有名なイーストウッドだが、本作は本人が全く出てこない最初の作品となった。主題が主題だけに本人が出る訳に行かなかったこともあるが、当時イーストウッドはカーメルの市長も兼務しており、あまり時間をかけられなかったのが最大の原因らしい。とは言え、思い入れだけでなく、作りとしても丁寧で、人間としてのパーカーをきちんと作り上げていた。当時のアメリカの光景や、人種間の微妙な関係とかも練り込まれた作りで、画面の重厚さもあってとても雰囲気が良い。

 パーカーに扮したウィッテカーも狂気と破滅の間で苦悩する役を好演。

 ただ、この手の作品の宿命か、ストーリーが暗く、今ひとつ乗り切れなかったのと、演出が重厚なのはいいけど、画面が暗くなり過ぎる上にごちゃごちゃしすぎてる感じ。落ち着いた雰囲気よりも、ジャズがアメリカの中でのし上がっていく華々しさの演出も欲しかった所。それに長すぎたしね。

 同じくジャズを題材とした作品に『Ray/レイ』(2004)があり、フィクションを上手く取り入れたこちらの方を先に観ていただけに、あまりにも真っ正直すぎる本作の弱さが見えてしまったのも難点か。破滅に向かって歩んでいるだけにしか見えないのは、観ていて辛いよ。

(評価:★3)

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