コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パンケーキを毒見する(2021/日)

作品そのものはそれなりに評価するけど、受けると思ってやった演出が全部駄目駄目。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 2020年に前首相が“体調不良で”政権を放り出したことで自民党の総裁選挙が行われ、その結果、内閣官房長官だった菅義偉が総理大臣となった。

 しかし就任時期は最悪な時期だった。新型コロナウイルス蔓延の中での就任で、非常に難しい舵取りを任せられたのだから。正直、誰が総理大臣になったとしても、ほぼ失敗するのは確定してるようなもの。

 しかしその中でもおそらくは最も不適切な人物だったとは思う。官房長官の時も、野党の追及を的外れな発言で煙に巻くしかなかった。これは官房長官の役割の一つと割り切れば良いのだが、政治主導で引っ張る役割の首相がこんなことをしてたら国会は停滞するばかりだ。

 本作は、その部分、何故彼が総理大臣向きでないのかという事を語るのだが、まず彼がどのようにしてトップに上り詰めたのかを過去に遡って語る。

 まず彼は富農の生まれで、単純に農業の後を継ぐ事がいやだったから上京し、仕事しながら受験して大学に入った(空手部だった)。卒業後教授の勧めで政治家の秘書になったということ。下積み時代からリーダーとしてとりまとめが上手く、すんなり政治家となれたというところ。

 はっきり言うが、この部分の演出はとても下手くそだった。前提抜きでたたみかける情報に戸惑うことになる。これは「管首相ってこんな人だよ」というネット情報を知ってることを当然として語っているので、それなりに管首相のことを調べてないなら、何を言ってるのか分からない問題がある。この部分はかなり重要で、ちゃんと順を追って説明しておくべき部分。

 そして政治姿勢については様々なインタビューで管首相の人心掌握の巧みさを語る。ここの部分はまあ普通だが、インタビューを通して、管首相の視点というのがよく見えてくるのは良かった。

 このインタビューで分かったのは、管首相が見ているのは、小さな仲間内の中だけである。国民のために働くと言っていながら、首相にとっての国民とは多分千人程度。一つの村の中くらいの人数しか見えてない。

 この人、立派な村長にはなれるだろう。上手くやれば県知事程度までならなんとかうまく行けるかもしれない。しかしそれ以上のことをやらせてはいけない人だ。実際今の横浜市を見れば、その影響力はよく分かるだろう。

 しかし仲間内の利益だけを追求し、仲間にしか良い顔を見せない人間に国のトップやらせてはならん。官房長官か幹事長なら充分出来るだろうが、首相は無理。こんな人を国のトップにしたら富が偏り、大多数の国民は苦しめられるだけだ。彼自身は時分に人望があると思ってるだろうし、ある側面から言うならそれも間違ってない。ただし彼について行けば莫大な利益を受けられる、数千人の中には入れるならばである。

 その結果は今の日本で良く出ている。

 この部分を明確にしただけで本作は見る価値があると言える。

 監督の政治主張もはっきりしているため、テレビでは観られない、圧力を掛けられた人たちの声もしっかり語らせているのも映画的。

 後はアニメ-ショーンシーンは無駄どころか不快なだけなので、全部カットした方が良かったくらい。サウスパーク感あったが、あれはアクロバティックな感性ないとやってはいけないもので、この監督程度の実力ではこの程度にしかならない。

 結果として、本作にも良い部分は確かにある。ただ半分は下手か無駄かなので、アニメパートを無くして編集を上手くやって、尺を2/3位にすれば良かったと思う。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。