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[コメント] シザーハンズ(1990/米)

ヤマアラシのジレンマという話がある。ヤマアラシは身を寄せ合えば寄せ合う程、相手を傷つけてしまう。エドワードは身を以てそれを教えてくれた。(元ネタが『エヴァンゲリオン』であるのが恥ずかしい)
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







<バートン流オープニングのケレン味 その3>

 この作品は『ビートルジュース』、『バットマン』と続き、オープニングがとにかく面白い。町並み(あるいはオブジェ)に肉薄し、流れるように移動する。そして最後に空高くに上がって今まで見てきたところを俯瞰して見るのだが、それが三作品それぞれに全く違う。ここではそれが本当の町になってしまう。是非この三作を見比べてみて欲しい。

 ポスターを最初に見た時、これはホラー映画か?と思う程のインパクトを持った作品だった。当時私はデップの名前は知らなかったが、バートン&ライダーは『ビートルジュース』で既に馴染みだったので、結構期待できそうな気がしてきた(ホラーも好きだし)。しかし、出てきたのは期待を完全に裏切った。これはもの悲しいお伽噺だった。不覚にも最後のあの雪のシーンは涙が浮かんだ。そして勿論、この作品を皮切りに、私はデップ大ファンへとなった(実際、デップとバートンが組んだ三作品、本作品と『エド・ウッド』 『スリーピー・ホロウ』は全部大好き!)

 まるで箱庭のような町で、世界と遮断されたこの町(何で丘の上にあんな立派な廃屋があって、それが誰にも気付かれなかったか、とは言うべきではないだろうけど)の中にも様々な人間関係がある。それが微妙なバランスで調和を取っていた所に闖入者が入ってきたことで人間関係が崩れていく。排除されるしかないエドワードと、それを黙認するしかない町の“良識ある”人々。結局これは共同体そのものの本質なのかもしれない。それをさらりと描ききったのがバートンの上手い所だ。やっぱ好きだわ。これ。

 ラストシーンだが、これはもの悲しく、そして間違いなくこれは救いだ。壊れきった町の中で、彼のことを想い続け、そして自分の子孫を通じ、未来へ向かおうとする姿勢がある者が、たった一人でもいたのだから。

(評価:★4)

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