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[コメント] ぼくの伯父さん(1958/仏=伊)

ユロの生き方って、結構憧れると共に、身につまされる部分もあります。それを心地良い笑いに昇華できるのが巧さですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 パントマイムの名手タチによるユロ氏を主人公としたシリーズの一作で、タチ演じるユロ自身はほとんど何も喋らずに、ただそこでウロウロして何らかのトラブルを起こす。そしてその周囲の人間が泣いたり怒ったりという構図なのだが、不思議とこれが心地良く、不思議な雰囲気を醸している。こういうパントマイム型の作品だと主人公がよく動くのが普通だが、ここでは全く逆に動かないことで笑いを引き出している。

 これはタチのキャラクタ性を活かすことが出来たのが一番だと思うのだが、重要なのは、それを最大限に活かすために、実に細かい構図を取っていると言うことも重要だろう。この作品にはカメラ・ワークが本当に少ない。限られ画面の中で物語は展開していくのだが、その空間を最初から最後までコントロール出来ているのが本作の最大の強味と言える。

 パントマイムの名手っていうのは、要するに単に自分の姿を見せるだけでなく、限られた空間の使い方が上手いと言うことなんだろう。このコントロールがきっちり出来ているからこそ、どれだけ緩やかな動きをしていても観ている側は楽しめるのだから。  設定も良い。機械を使う側にいるはずの人間が機械に使われる側に回ったらどうなるのか?という単純な命題だと思うのだが、考えてみれば、道具が便利になればなるほど、逆にその便利なはずの道具を使いこなすため、自分の負担が増えていく。果たして今は昔と較べてどれだけ楽になってるんだろう?単に身体だけが弱くなって、逆に努力することの方が多いんじゃ無かろうか?そんなことを考えさせてくれる。事実、エアコンのリモコンが動かなくなって右往左往した挙げ句、単に電池切れだったというオチは結構実生活の中でもあるもんだ。細かいことにも注意が必要な世の中なんだな。そんな風に思うと、ここでの笑いも妙にシニカルなものになっていく。

 生活に疲れを感じた時など、お薦めできる作品。

(評価:★4)

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