[コメント] ショーシャンクの空に(1994/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ホラー作家で知られるスティーヴン=キングの非ホラー中編「塀の中のリタ・ヘイワース」を完全映画化。これを、これまでホラー映画の脚本家として知られるフランク=ダラボンが映画化したものだが、それまでのダラボンの脚本と言えば、B級や人気ホラーのシリーズの一本という作品ばかりで、全然期待もしてなかったのは確か。これもひょっとしてホラー仕立てになるんじゃないか?とか思いながら、それでもキングファンとしては、やはり外せずに劇場まで観に行ったものだが(事実、映画の時はあんまり話題にもならなかった)…
いや、これは思い切り騙された。はずれが多いというキング原作作品をここまで忠実に、しかも見事に映画化できるとは。はっきり言って驚いた。
この作品の巧さは一本の筋書きとしてではなく、小さなエピソードが重なっていく内に話の流れが出来ていというもの。事実、本作は盛り上がる部分が大変少ない。だけどこれを観ることで、キングの志向していることもそれなんだろうと思わされたこと。キング小説の面白さは、しつこいほどの日常描写を物語に絡めていく内に、徐々にその日常性から切り離された世界へと入っていくと言うことであり、ミニエピソードの繰り返しこそがその醍醐味とも言える。
このミニエピソードこそが、本作においては刑務所の非人間性と、それによって押しつぶされ、現実に対処できなくなってしまう人間を作り出している。その中でたった一人、20年もの間特異性を持ち続けることが出来たアンディの意志の強さを見せることが出来たのだ。それを常識人であり、心まで刑務所に囚われてしまったレッドの目で見せることが本作の素晴らしさを出している。
だから本作はまるで『ドン・キ・ホーテ』のように視聴者を代弁する常識人の目があってこその作品だったわけだ。そう言う意味では本作の主役はやっぱりティム=ロビンスではなくモーガン=フリーマンにこそ与えたいと思う。
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