コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ピースメーカー(1997/米)

一見単純な物語なんですが、監督が何を撮りたかったか?と考えると結構深い気もする作品ですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 表面的に見る限りは、昔から映画で好まれる素材を現代風に派手に仕上げた作品に過ぎず、物語自体はこれまでの様々な作品によって語り尽くされた印象を受ける。ワールドワイドに活躍の場を広げている事くらいが特徴か?と言う印象で、派手さの中に隠れてしまった感じもあるのだが、本作の焦点はもう少し違うところにあるように感じる。  スパイものの映画はこれまで数多く作られてきたが、時代に合わせ、様々な変化も受けてきた。冷戦時は特に花盛りだったが、60年代は頭脳派の主人公を配し、緊張感溢れる作品が作られていたが、80年代になると、マッチョな主人公が簡単に銃をぶっぱなすような単純さと派手さを強調する内容になっていった。ただ、冷戦終結後の90年代になるとその様相も変わってくる。敵をどのように作っていくかが問題になってきた訳だ。結局はテロリストで、この流れは現在も続いてる。

 本作もその系統に則ってはいるが、同時に本作は冷戦後に起こった数多くの内戦についてもしっかりと描写されているのが特徴的。ここでは内戦で傷ついたボスニアの民衆の悲惨さが、ほんの僅かでも出されていたのが特筆すべきこと。敢えて言わせてもらえれば、監督が撮りたかったのは、アクションではなく、この部分にあったんじゃないかな?

 それに『The Peacemaker』という題も皮肉に溢れてる。平和とは何か?それは一言で言えば“均衡”である。何となくすっきり終わらせないのも一つの主張と捉えてみたい。

 最近すっかり演技派女優となったキッドマンが単なる美しさを売りにしていた最後の作品だったかも知れない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。