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[コメント] 風林火山(1969/日)

こういう大作を観ると、逆にテレビドラマの意味ってのも分かります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 戦国の世の中、数多くの武将が群雄割拠する時代に現れた天才軍師山本勘助の半生を描く井上靖の同名小説の映画化作。60年代後半、徐々に衰退の兆しを見せていた邦画をオールキャストと壮大な合戦シーンを駆使して、「映画ならでは」の楽しさを追求した作品と言えよう。1968年邦画興行成績は堂々の1位。

 1950年代あたりから邦画の大作というと決まって歴史絵巻になり、金を使うんだったらこれ。といった感じで結構な数の作品が作られてきた。本作はその最たるもので、今だったら予算上不可能な豪華キャストが魅力。実際見応えのみに関して言えば素晴らしい作品だとも言える。

 ただ、これを改めて観て思うことは、戦国絵巻というのは、映画ならではではあるものの、物語を重要視するならば、決して良い作品とは言いがたい。特に本作はそれが顕著。主役の山本勘助は長く武田に仕えた軍師だけに、取り上げるべきエピソードがかなり多く、話の山場が多すぎて、結果物語そのものが散漫になってしまった。エピソードの一つ一つは盛り上がって、演出も良いのだが、それを小出しに何回もやると、やっぱりきついかな?スケールを考えなければテレビシリーズでやった方がかえって見応えがある…というか2007年にNHKの大河ドラマでやってたので(主人公山本勘助役は内野聖陽)、それを観てる最中に本作を観たもので、余計それが目についてしまったというのは事実。

 歴史絵巻は壮大であるが故に映画向きであり、逆に壮大であるが故に映画の時間では描ききれない側面があることを痛感させられた出来事。シリーズ化するか、あるいはスケールを小さくしてテレビにした方がかえって良いのか?

 見事なオールキャストも、実際それを活かし切れたかというと難しいところ。逆に多彩なキャスティングが三船敏郎の存在感を薄めてしまった感じは否めず。由布姫との、戦国時代らしいロマンスも、ドラマ性を深めるよりもかえって浅くしてしまった感じ。何より、やっぱりこの時代の三船敏郎だと山本勘助やるにはちょっと老け過ぎか…内野聖陽の溌剌とした姿を観た後で本作を観ると、いかんせんどうしてもそれを感じてしまう。

(評価:★3)

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