[コメント] モロッコ(1930/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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少なくとも第二次世界大戦が始まる前までのアメリカ映画の最大特徴は“溌剌さ”と言って良い。新興国であり、これからどんどん伸びていくことを目標とした国家の形そのものが映画にも影響を与えていたのだが、そこには強烈なポジティヴ・シンキングはあっても、退廃的雰囲気を受け付けない雰囲気があった(本作でもラストシーンはいかにもアメリカっぽさを演出している)。しかしそれでは映画は娯楽に留まり、芸術的な雰囲気を持ち込むことがなかなか困難な状況。そこにディートリッヒが入り込んだことによって、映画芸術に深みを与えることになったと言われる。彼女を受け入れたことがアメリカ映画の進歩でもあった。
だがむしろ影響が強かったのはアメリカ以上に日本の方だったようだ。本作が日本でスーパーインポーズ(字幕)が使われた初めての映画だと言うこともあるが、内容的にも本作から多くのものを取り入れた。それまで輸入されていたものは基本的にパントマイムを中心とした陽性のもの。そこにこういった退廃的な雰囲気を持った作品が入り込んだのは、おそらく映画人や文化人たちは狂喜したことだろう。遙かに日本は陽性の作品よりもこういう作品の方が好まれるのだから。男装のアイディアはディードリッヒ自身が思いついたというが、これほどまでに似合う女性もなかなかおらんだろ(ついでに言えばこの人ほど煙草の似合う女性もいない)。
物語そのものは本当になんと言うこともないメロドラマに過ぎないのだが、キャラクタの立ち具合が異様なほどはまっているので、それだけでも忘れ得ぬ名作であると言えるだろう。クーパーも得意とする純朴な青年役をかなぐり捨てたかのようなやくざな役柄を好演(と言うよりそう言う役はこの後で演じることになるんだが)。雰囲気的にはクーパーはこっちの方が合ってるんじゃないのかな?
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