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[コメント] 天国の日々(1978/米)

美しい風景の中で展開するドロドロの人間関係。これがマリック監督の醍醐味…最も私が苦手としてるんですけど…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 マリック監督の出世作で、言葉そのものよりも画面で語る。と言う監督の個性が強烈に出ている作品。物語自体は陳腐さを感じるものの、それを超えた美しさが圧巻。セットではない、本物の自然を切り取ったような演出が冴え渡っている。そこに登場する人間も、自己主張を極力抑えて、大きな自然の中、淡々と演じているのも評価高い。長回しのシーンが多用されるが、それらのシーンが本当に美しく、まさに眼福と言うべきか。

 しかしその美しい風景の中で人間の営みとは打算と残酷さで成り立っている。表題の『Days of Heaven』とは、衣食足りて愛するものと共に生きると言う意味なのだろうけど、その「天国」を手に入れるために、何を犠牲にするのか。そしてその帳尻を合わせるために何をしなければならないのか…生きるとはきれい事じゃないし、プラスアルファを求めるなら打算を是認しなければならない。

 しかし、こういった話というのはちょっと苦手だし、それに今ひとつ風景と物語が噛み合ってもいない気がしてならない。ポランスキー監督の『テス』(1979)にもつながるのだが、主軸となる物語がどうにも合わないように思う。その合わなさが結局最後まで続いてしまった。画面は綺麗なんだけどね。

 カリスマ性の固まりのようなギアが本作に関してはかなり抑え気味な演技を見せていて、こんな役も出来ることが分かったけど、多分相当監督とはやり合ったんだろうな。

 本作の素晴らしい撮影はネストール=アルメンドロスによるもの。この作品を可能な限り自然光で撮ろうと苦心したが、絶対光量の高いハリウッド・システムに慣れている助手達は大反発し、逃げ出したのもいたという。

(評価:★3)

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