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[コメント] ある映画監督の生涯―溝口健二の記録(1975/日)

本音を引き出すという意味では凄いけど、溝口監督そのものよりも新藤監督から見た溝口健二という一個人を突きつけられた感じ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 数々の傑作を作り上げ、日本映画に大きな足跡を残した溝口監督だが、その姿を赤裸々に描こうとする新藤監督の姿勢がよく分かる作品で、通り一遍のインタビュー作品とは一風変わった作品に仕上げられている。これが出来るのもATG作品だからだろう。一応師匠に当たるはずなのだが、新藤監督も本当に作りたいものを作ったと言うことがよく分かる。

 ただ、その気合いの入り方は時として暴走もあり。何せ聞き手であるはずの新藤監督の方が時として雄弁に語ってしまい、語り手の方を萎縮させてしまったり、時には怒らせてしまったりしてる。殊に溝口監督に反感を持つ増村保造や、公私にわたる溝口監督のベストパートナー田中絹代に対してのインタビューは、観ていて「新藤監督って無礼すぎないか?」と思わされるほど。特に田中絹代に対しては、最初から「お前ら男と女の仲だっただろう?」という前提で話しているため、田中が否定しようがやんわりとかわそうとしようがお構いなくずけずけとたたみ込んでいく姿勢は凄まじいほど。

 新藤監督の姿勢には頭が下がるとはいえ、映画監督は映画監督で良いんじゃないか?という思いも確かにあり。それを一個人として剥ぎ取るってのはどうだろ?多少の気持ち悪さも覚えてしまった。

(評価:★3)

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