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[コメント] ロビンフッドの冒険(1938/米)

アクション映画の中にも、いくら時間が経過しようと全く色あせない作品も存在します。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 数あるロビンフッド伝説の映画化の中では最も成功したと言われるのが本作。

 日本でも古くから白波五人男や国定忠治と言った義賊(?)を好む風潮があるが、イギリスでもそう言う人物は存在する。それが伝説的な義賊ロビン=フッド。実在したかどうかはよく分かっていないそうだが、悪政によって抑圧された民衆によって作り上げられた伝説の英雄である。

 イギリスと日本は島国という点で似ているが、日本との大きな違いはイギリスの場合は民族問題というのが歴史にずっと横たわっていること。この狭い国の中でも、民族は多岐に渡り、イギリス国内の紛争の大部分は民族紛争であったりもする。現代も尚アイルランド人とブリテン人との諍いは続いているが、これが時代をさかのぼると、ウェールズ人やスコットランド人なども登場し、更に時代をさかのぼると、ノルマン人とサクソン人との争い、更にその前になるとチュートン人やデーン人との争いや、ローマ人の征服など。政治のみならず民族の移動が大変多く、とにかく複雑。イギリスの歴史物の作品を見る場合、それなりに身構えないと訳分からなくなるが、お陰で色々詳しくなった。

 本作の場合、いわゆるノルマン・コンクエストによって外来のノルマン人によって征服されたブリテンが舞台。ノルマン人はそれまで争いの絶えなかったブリテンに安定した政治をもたらしはしたが、一方では在郷人であるサクソン人をことごとく迫害した。それがサクソン人民衆によってロビンという英雄を呼んだと言うことになるのだろう。

 ロビンフッドは時代に即した一種のおとぎ話ではあるが、映画にする場合、これを単なるおとぎ話ではなく、民族紛争なども絡めたリアルな話にしてしまう傾向がある。真面目な映画人が色々頭を捻るのだろうが、問題はその大半が全然面白くない。という事実。陰々滅々としたストーリーと、複雑に絡む民族問題を映画で出されても、なかなか理解出来ないというのが事実であろう(それに大半は想像だし)。

 結局本作の最大の売りは、それらをすっぱりと切り捨て、善玉と悪玉を明確化させることによって完全な娯楽作品としておとぎ話に近いお噺に徹したこと。実際これくらいがいちばん分かりやすいのだな(脚本の方はかえって大変だったかも知れないけど)。

 最初期のカラー映画というのに、今観ても実に新鮮。演出に関しては現代でも充分通用するほどだし(事実初見ではてっきりもっと遙か後に作られたものだと思った)、チャンバラに徹した殺陣も明確で良い。何より観ていて楽しいのが最大の利点。この手の作品は見せ場でワクワクさせて、しっかり笑わせてくれれば、それが何よりであることを改めて感じさせられる。

 すっとぼけた感じのフリンがとても楽しそうに演じているのも良い。フリンのお陰でロビンはどことなく人を食った快男児として仕上げられてる。上手く噛み合った作品とも言えよう。

 歴史映画に興味ある人の入門編として、文句なくお薦め出来る良作。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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