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[コメント] ブレイブ(1997/米)

デップの気負いがよく分かります。それが良いか悪いかは判断難しいですが。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ジョニー=デップ初監督作。最近になってもてはやされすぎの感のあるデップだが、実際彼のフィルモグラフィを見てみると面白い。決して受けそうな作品にばかり出ているわけではないのだ。いや、むしろそう言う作品の方が少ない位なのだが、どうしても大作に目がいくため、ついヒーローっぽく思われがち。だけど、そう言うマイナーな作品にこそ、本当に彼の演じたがっていた姿が見えるだろう。

 そしてその思いが募ったからこそ、彼自身の監督第一作に本作を持ってきたと考えられる。個人的に仲の良いブランドが友情出演してくれたし、かつて『デッドマン』(1995)で印象的な音楽を作り上げたイギー=ポップを起用するなど、本当に個人的な繋がりで作り上げた作品。手作り感覚満載ながら、しっかりした印象を残してくれた。

 ただ、この作品はまるで観ている側の感情移入を防ぐかのような作りをしていて、決して観やすい作品とは言わない。主人公ラファエルの考えは決して褒められたものではなく、大変後ろ向きだし、生きる戦いを放棄しておきながら、それを勇気のように語る。というのは、映画の作り方としては明らかに逆行してる。

 ただ、一つ言えることは、この映画はネイティヴの側に立って作られていると言うことだけは分かる。

 なんでもデップの祖母はチェロキーだったそうで、デップにもその血が流れている訳だが、肉体と精神を別に考えるのがネイティヴの思想とするならば、肉体は滅んでも、魂は脈々と受け継がれていく。と言う主張なのかも知れない。それにネイティヴの生活がどれだけ悲惨なのか。と言うことを語り、“健全なる”アメリカ社会が持っている暗部を浮き彫りにしようとしたと言うのもあるだろう…成功したかどうかはともかくとしても。主人公ラファエルに「刑務所に入ったことはあるか?…言うまでもないか」と、さも当たり前のように語られている中に、それも現れているだろう。

 初監督と言うことで、間の悪さやストーリーのゴツゴツしたところも感じられるが、むしろ鬱になりたい時などにはうってつけの作品ではあろう。少なくとも私は結構好きだ。

(評価:★3)

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