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[コメント] まごころを君に(1968/米)

まごころを君に』で検索したら登録されてなかったので驚きました。この題はこの題で味はあるんだけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ダニエル=キイスの傑作長編小説『アルジャーノンに花束を』の映画化作品。クリフ=ロバートソンの役どころは確かに巧く、オスカーも頷けるのだが(『レナードの朝』で似たような役を演ったデ・ニーロもノミネートされているから、この手の役を巧く演じるっていうのはアカデミーの好みなのかも知れない)、原作ファンとしてはちょっと首を傾げてしまう出来だった。

 原作の良さは、主人公のチャーリーが日記を書いていて、それを読んでいるから楽しいのだが、ここでのチャーリーは日記を書いていない。ただ運命のまま流される役を演じてるだけ。映画というメディアを用いているから仕方ないのかも知れないけど、原作最後にあった最も大切な台詞「アルジャーノンに花束を」が抜けてるのは残念すぎ(それで邦題が変えられたのかな?)。

 映像的には漫画的なコマ割りの手法を用いたりして見るべき所も多いし、ペーパーバック版(所有してるけど読んでない)の表紙にもなった印象的なシーンがやはり心に残る。

 不満も大きい作品だし、原作の良さをかなりスポイルもしてるけど、それでも元が良いだけに出来そのものは結構良い。

 以下は完全な蛇足。

 私は原作の大ファンだが、著者のダニエル=キイスは短編のトム=ゴドウィン(『冷たい方程式』)、長編のキイス(『アルジャーノンに花束を』)、シリーズのフレッド=セイバーヘイゲン(『バーサーカー』)。この三人の作家はかつて“SF界の一発屋”と呼ばれていた。代表作は一本だけ。しかもそれ以外の作品は殆ど人に知られていないと言う悲しい作家に付けられた不名誉な呼称だった。

 確かに『アルジャーノンに花束を』は著者にとって出世作であり、その出来は「奇跡」と呼ばれるほどだった(授賞式で「何故こんな作品が描けたのです?」という質問に対し、「何ででしょうね。私にも分かりません」と著者は答えたそうだ)。本当に素晴らしかった。

 実際、私はこれまでに3冊、『アルジャーノンに花束を』を買っている。最初の一冊は自分で読むため。次の一冊は当時つきあっていた女性にプレゼントするため。そして三冊目は家庭教師をしていた中学生に読ませるため…私にとって、かなり思い出深い作品だ。

 尚、アニメでヒットを飛ばし続ける庵野秀明監督は自分の関わったアニメの最終回にはSF小説の題を付けるのが好みらしいけど、劇場版『エヴァンゲリオン』では何故か小説ではなく、この映画の題を少し変えて使っていたりする。

(評価:★4)

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