コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ミーン・ストリート(1973/米)

才能ある作り手と演じ手とが若さを爆発させた作品です。パワーを感じます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 すっかりギャング映画で有名になったNYのリトル・イタリーを舞台とした青春物語。日本でも丁度70年代には粗暴な青春物語がよく映画になったが、アメリカでも事情は同じようだ。ただし、抜群の演出力を持つスコセッシがこういう作品を作ると、途端に泥臭さよりもスタイリッシュに感じてしまうのが不思議なところ。演出に関してはこの当時では突出した良さを持っている。

 特に若さというのは、パワーをもてあますのは共通してるが、それぞれその表現は異なる。たとえばここではチャーリーの方は基本そのパワーを待つ方向へと使っている。多くの場合は彼の生き方が多い。

 可能性としては他にスポーツや打ち込めるものを作ってそれでパワーを発散するという方法もあるのだが、ここには登場せず。

 そして最も破壊的なパターンとして、平地に乱を引き起こしてしまう人間というのも存在する。ただなんとなく破壊衝動に突き動かされ、他人を怒らせたり、器物を破損してみたり…『暴力脱獄』のニューマンが最も良い例だろうけど、本作のデ・ニーロ演じるジョニーもそれに負けてない。いつも苛つき、パワーの爆発を待ってるようなそんな男として描かれている。

 全く理にかなっていないのだが、そう言う生き方は映画では映える。理にかなったアクション作品ばかりを観ていると、こういう作品はかなり新鮮な思いを持って観られる。

 キャラに関しても、本作が出世作となったというデ・ニーロ、カイテル双方が見事な男臭さを好演。二人ともパワーをもてあます若者を、自然体で演じてくれている。特に若さ爆発と言っても人それぞれなのだが、ちゃんと二人の若さの違いもはっきりと描いている事も重要な点。

 しかもそれぞれが、今の生き方では破滅することを自分でも分かっていて、時としてそれを止めよう止めようと思うのだが、やっぱり破滅的な生き方に突き進んでしまう。この辺本当にリアリティある。

 ただ一方、何故ここまで友情を感じ続けられるのか。という点では説明不足だったかな。イタリア人は“ファミリー”のつながりを何より大切にするって事なんだろうけど、それは監督自身にしか理解できてなかった気がする。前年にコッポラの『ゴッドファーザー』があったので、それを観てること前提で作られてたのかも知れない。

 結構ごつごつした作りだし、バランスも決して良いとは言えない。しかし、その中に確かにスコセッシの作家性と、溢れんばかりのパワーを感じ取ることが出来る。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。